Hewlett Packard Enterprise(HPE)は11月27~29日にかけて、スペイン・マドリードで欧州向けの年次イベント「HPE Discover Madrid 2018」を開催した。27日の基調講演では、最高経営責任者(CEO)のAntonio Neri氏が、今後4年で40億ドルをエッジ技術に投じると発表。今回は、同社のエッジ戦略についてまとめる。
スポーツでもデータ活用が進む
エッジへのフォーカスについては、「データの94%が活用されていない。全てのデータを活用できるようにする。これは新しい世界であり、不可欠なステップだ」とNeri氏は述べる。データ活用の恩恵を享受するのは、企業のビジネス活動だけでない。医療や学術、スポーツの領域でも進んでいる。
オランダのサッカーチームであるAmsterdamsche Football Club Ajax(アヤックス・アムステルダム)は、トレーニング施設にAruba Networks(HPE傘下)のネットワーク機器を導入。コーチが選手のパフォーマンスをより細かく管理して、試合に役立てているという。「エッジからクラウドまでをカバーするアーキテクチャで、データ活用の準備が整う」(Neri氏)
スポーツに関するもう一つの事例がゴルフ大会のRyder Cupだ。2年に1度開催される欧州と米国の対抗戦で、2018年は9月末に開催された。ゴルフファンのエンゲージメントを高める取り組みが行われた。
Ryder Cupの技術チームは、開催地となるフランス・パリ郊外のゴルフ場「Le Golf National」において、150エーカーに及ぶコース上にArubaのネットワークを構築した。アクセスポイントの数は740件超、スイッチの数は130個に達する。コースでは、データセンターを2カ所、オペレーションサポートセンターを4カ所に設置した。これにより、27万5000人の観客、5000人のスタッフ、1000人の報道関係者などの通信を支えた。
Wi-Fi、IoT、セルラーなどの技術を統合しただけでなく、ジオフェンシング機能によるインタラクティブなマップ、ターゲット化されたコンテンツの提案など、位置情報ベースのエンゲージメントを実現した。会場にいる観客へのプッシュ通知の数は12万件。Ryder Cup Europe and European Tourで最高技術責任者(CTO)を務めるMichael G. Cole氏は、「(世界最大のスポーツイベントである)Super Bowlの4倍だ。世界最大の“BYOD”イベントになった」と胸を張る。
「コネクテッドでインテリジェントなコースにしたかった」とCole氏。その狙いはファン層の拡大だ。若い世代をはじめ、幅広い人々に関心を持ってもらいたいという。「われわれはエンターテインメントカンパニーを目指している。デジタルは選択肢ではなく必須条件だ」(Cole氏)

Ryder Cupを囲むHPE CEOのAntonio Neri氏(左)、Ryder Cup Europe and European Tour CTOのMichael Cole氏(中央)、Aruba Networksの創業者でインテリジェントエッジ担当プレジデントのKeerti Melkote氏(右)