アームは12月5日、都内でプライベートイベント「Arm MBED CONNECT」を開催した。ArmがIoT(モノのインターネット)デバイス向けに提供する組み込みOS/開発環境である「MBED」をテーマにした「開発者による、開発者のためのイベント」と位置付け、基調講演では8月に買収されたTreasure Data共同創業者でArm IoTサービスグループ テクノロジー担当バイスプレジデントを務める太田一樹氏の講演も行われた。
国内で3回目となる同イベントのあいさつに立った IoTサービスグループ セールス&事業開発 ディレクターの春田篤志氏は、「これまでデバイスの開発や管理など『MBED OS/MBED Cloud』というarmが得意としてきたデバイスのエコシステムを中心とするトピックだったが、6月にStream Technologies、8月にTreasure Dataを買収し、デバイス管理だけではなく、コネクティビティやデータ管理のサービスも包括的に提供できるようになり、データやデータサイエンスの部分もテーマに加えた」とイベントテーマの広がりを説明した。

Arm IoTサービスグループ テクノロジー担当バイスプレジデントの太田一樹氏
基調講演では、GMOクラウド 専務取締役グループCTO(最高技術責任者)の唐沢稔氏が、「クラウドとPKI:これからのIoTに不可欠なセキュリティ技術を知る」と題して、PKI/RSA暗号技術の概要やIoTでの活用を紹介したほか、太田一樹氏が「データファースト時代の開発者像」と題して、同社のIoTへの取り組みの概要を説明した。
それによれば、現在の同社のIoTプラットフォーム「arm PELION」は、従来のデバイスマネジメント(MBED Cloud)に、StreamのコネクティビティマネジメントおよびTreasure Dataのデータマネジメントを買収したことによる機能を追加した「IoT統合プラットフォーム」となっている。
また、IoT分野におけるArmのポジションとして、現在までにARMベースのチップが累計で1250億個以上出荷されており、2035年には累計で1兆個のIoTデバイスの出荷が見込まれるという。同氏によれば、この数は「1人当たりに数百個のセンサが取り付けられている世界観」という。この膨大な数のIoTデバイスがARMベースのチップで動作することで、同社はIoTデバイスを活用するユーザーの要求/要件をいち早く知り、ユースケースを取りまとめることができる立場にある。太田氏は、これこそが同社の強みだとした。

IoT分野における「Perion Platform」の構成
基調講演後のメディア向けセッションでも太田氏は、Armの「オープン指向」を強調。「ベンダーロックインをしない」というポリシーを明確にしたことで、逆に同社へ「(さまざまな分野の企業の)買収によるメリットに乏しいのでは」という疑問が浮上し、メディアからの質問がこの点に集中した感があった。
同氏の回答から、一連の買収を通じてArmが統合プラットフォームを提供できるメリットはあるものの、ユーザー側としてはベストオブブリードで必要な部分だけ“つまみ取る”ことも可能とし、「統合されなくては提供できなかったメリットとまでは言えないのでは」というのが正直な印象である。この点で2018年のArmの買収戦略が正解だったかとうかは、2019年以降の同社の事業展開によって明確になることだろう。

IoT分野でArmが強調する優位性