チェス、将棋、囲碁のすべてでこれまでの最強AIに勝利した人工知能「AlphaZero」

JACKSON RYAN (CNET News) 翻訳校正: 湯本牧子 吉武稔夫 (ガリレオ) 2018年12月10日 11時27分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 チェスではロボットに決して敵わないことを人間はほぼ受け入れたが、今度はそのロボットですら、他のロボットには決して敵わないことを受け入れざるを得なくなった。

 新たな人工知能(AI)プラットフォーム「AlphaZero」は、人間による介入なしに、囲碁、チェス、将棋をゼロから学習できる。AlphaZeroはディープニューラルネットワーク(DNN:深層神経回路網)を利用して3種のボードゲームをすぐに習得し、「史上最強のプレイヤー」になった。

提供:Nakhorn Yuangkratoke/EyeEm
提供:Nakhorn Yuangkratoke/EyeEm

 AlphaZeroは現地時間12月6日、「Science」に掲載されたDeepMind Technologiesの研究論文で発表された。DeepMindは、Googleの親会社であるAlphabet傘下の英AI企業で、何年も前から囲碁AIを手がけてきた。2017年、DeepMindは囲碁AIの世界チャンピオンだった「AlphaGo」を引退させたが、AIの開発は続けていた。DeepMindの研究はAlphaZeroで頂点に達した。

 AlphaZeroは、3種のボードゲームで以下に挙げた世界最高のAIと対局した。

  • Stockfish」:チェスAIの世界チャンピオン。
  • elmo」:2017年に開催された第27回世界コンピュータ将棋選手権の勝者。
  • AlphaGo Zero」:DeepMind自身が手がけた囲碁AIで、史上最強の囲碁プレイヤーとうたわれていた。

 どのゲームでも、AlphaZeroはゲームの基本的ルールに関する知識を与えられただけだった。各AIマスターとの対局に先立ち、自分自身との対局を数百万局こなした。最初は勝つためにランダムな戦術を試みていたが、「強化学習」(Reinforcement Learning)と呼ばれるトライアル&エラーのプロセスを通じて、どの戦略が最もうまくいくかを徐々に学習した。

提供:DeepMind
提供:DeepMind

 訓練と学習のプロセスは、グーグルの機械学習向けプロセッサ「Tensor Processing Unit」(TPU)5000基を使用し、チェスで9時間、将棋で12時間、囲碁で13日間かかった。参考までに、TPU 1基だけでも「Google Photos」で1日に1億枚以上の写真を処理できるため、AlphaZeroはかなり強大な処理ハードウェアと言える。学習完了後、AlphaZeroはAI同士の対局に臨んだ。

 そして、相手をことごとく打ち破った。

 この研究で独特なのは、学習アルゴリズムを「モンテカルロ木探索」(MCTS)と呼ばれる「検索手法」と組み合わせた点だ。MCTSは、囲碁AIプログラムが次に打つ手を識別する手法だ。DeepMindチームはこれと同じシステムをチェスと将棋にも使い、他の複雑な古典的ゲームにも応用できることを初めて示した。

 おそらく人間のチェスプレイヤーにとって最も興味深いのは、AlphaZeroが、人間から知識を与えられることなく、これまでに見られなかった戦略や斬新な考え方を実践したことだろう。その攻撃的姿勢と極めてダイナミックな対局は、DeepMindのブログにコメントを寄せたチェスのグランドマスターMatthew Sadler氏を驚かせた。

 こうした独自の戦略と能力を備えたAlphaZeroは、チェスプレイヤーにとって優れた教育ツールになる。これまでに見たことのない戦術的な戦い方を取り入れられるからだ。

 AIが人間を打ち負かすという筋書きは、ゲームの世界ではかなりおなじみのもので、ボードゲームや、「Dota 2」などの複雑なマルチプレイヤー型ゲーム、そしてもちろん囲碁でも、ロボットは人間を打ち負かしている。

 だからといって、AIが文字通り、これまでに発明されたあらゆる対戦型ゲームで人間を打ち負かしつつあると言えるだろうか?いや、そうとも言えない。今回、DeepMindが利用した3種のボードゲームは際立って複雑だが、いずれも2人で戦うゲームであり、次の手を打つのに必要なすべての情報が常に目に見えているという点で、AIにやや有利だ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]