アイシン・エィ・ダブリュは、トランスミッション(変速機)など自動車部品の生産設備をつなぐネットワーク基盤を、SDNを活用して構築した。同基盤は、本社第二工場および岡崎東工場で稼働開始している。構築を担当したNECが発表した。NECが、企業の生産設備をつなぐネットワークにSDNを導入するのは今回が初めて。
アイシン・エィ・ダブリュは、オートマチック車の核となるオートマチックトランスミッション(AT)や、無段変速である連続可変トランスミッション(CVT)などを開発・生産しており、金属工作・プラスチック成形など組み立て工程の設備から搬送関連、検査機、管理システムまで、多様な設備を導入している。
従来、設備の稼働情報は、各設備のProgrammable Logic Controller(PLC)から手動で集めたり、手入力で記録したりしていた。このため、1つのプロジェクトで500~600台ある設備から1台ずつ情報収集する場合、設定に非常に手間がかかるとともに、IPアドレスの重複など設定ミスのリスクもあった。
新ネットワーク基盤は、NECのSDN対応製品「UNIVERGE PFシリーズ」を中核として設計・構築したもので、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)でネットワーク全体を可視化できるようになっており、セキュリティレベルも向上した。
アイシン・エィ・ダブリュ 岡崎東工場のネットワーク概略
工場の設備間ネットワークは、専門的な知識が必要で、製造部門とIT部門が共同で構築する必要がある。また、運用および保守については、製造部門が現場で行う必要があった。今回構築したネットワーク基盤では、SDNを活用することでネットワーク全体の構成や通信状況をGUI画面で可視化し、仮想ネットワークを一元的に管理・制御できる。これにより、万一障害が発生した際にもその部分を迅速に特定し、早期復旧に向けた対策を取ることが可能となる。
また、生産ラインのネットワークでは、直接インターネットにはつながっていなくても、メンテナンス時に持ち込みPCが接続されるなど、外部からウイルスが混入する可能性があり、IPアドレスの重複など設定ミスによるトラブルのリスクもある。今回構築したネットワーク基盤では、セキュリティ階層の異なる仮想ネットワーク(VTN)を柔軟かつ迅速に構築することで、システムごとに異なるセキュリティポリシーの適用や、ウイルスやサイバー攻撃時における被害範囲の最小化が可能となる。