ネットワークの自動運転はもう“SF”ではない--ジュニパーのCTOが進展報告

渡邉利和 2018年12月13日 13時16分

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 ジュニパーネットワークスは12月12日、同社が推進する「Self-Driving Network(自動運転ネットワーク)」に関する説明会を開催し、現状などについて説明した。博士で米Juniper Networks エンジニアリング担当最高技術責任者(CTO)を務めるKireeti Kompella氏は、2年ほど前にも同様に説明し、当時は新しいコンセプトだったが、この間に急速な発展を遂げた自動車の自動運転技術と対比して、Self-Driving Networkを「ネットワークの“自動運転技術”」と語った。

Juniper Networks エンジニアリング担当最高技術責任者で博士のKireeti Kompella氏
Juniper Networks エンジニアリング担当最高技術責任者で博士のKireeti Kompella氏

 まず同氏は、その前提にネットワークの運用管理における「信頼性」「スピード」「効率化」が相反する要素となるという考え方を示した。これは、それぞれの要素を全て同時に満たすことはできず、どれかが犠牲になるという現状のネットワークが抱える課題の認識となる。

 つまり、迅速な作業を行うには信頼性が犠牲になる、信頼性を高めようとすると効率性が犠牲になる、といった関係だ。こうした相反関係は、人間が作業を行う以上、完全な解決はほぼ不可能と考えられてきたが、「Self-Driving Network」によって実現する高度な自動化がこの問題を解決する、という。さらに同氏は、ジュニパーが現在掲げる「Engineering Simplicity」というメッセージにも言及。「技術を単純化するのではない。ベースとなるのは複雑で高度な技術だが、その使い方をシンプルにしていく」と語り、Self-Driving Networkに取り組む意義を説明した。

 発展を続ける自動車の自動運転では、その到達度が5段階で定義されている。「Level1 運転者支援」「Level2 部分的自動運転」「Level3 条件付き自動運転」「Level4 高度自動運転」「Level5 完全自動運転」というのであり、無人運転を含む完全な自動運転が可能なLevel5では、運転者は全く関与せず、Level3ではシステム側が対処できない状況に陥った際には運転の主導権を人間に戻すという対応が行われる。

 同氏は、現状の自動運転技術について、一部のメーカー/車種でLevel3が実現され始めた段階にあるとした上で、この状況には大きなリスクがあり、ユーザーが安心して利用できる状況とは言い難いという認識を示した。というのも、万一システムが対処できない状況に直面して人間に制御が渡された場合、運転者がとっさに適切な対応ができるとは限らず、結果として人命に関わる重大事故につながる可能性が高いためだという。

Self-Driving Networkを実現するモジュールの構成(出典:ジュニパーネットワークス)
Self-Driving Networkを実現するモジュールの構成(出典:ジュニパーネットワークス)

 しかし、ネットワークの自動運転技術は人命に関わるリスクはほぼなく、発展途上の技術であっても運用管理担当者の負担軽減に大きく貢献することになる。同氏はこの状況について、「Level3の自動化では、おおよそ90%の作業が自動化されるが、困難な10%に関しては人間に任される。自動車の場合、この10%は人命に関わる危険な状況につながる可能性が高いため、この段階の自動運転は実用的でないと見なされることが多い。だが、ネットワーククの場合は煩雑な90%の作業を自動化してシステムに任せることで、浮いた時間をより困難なタスクの処理に充足できるため、既に十分実用的だと言える」と語った。

 同社のSelf-Driving Networkは、インテントベースネットワークの考え方を基本としており、運用管理者のインテント(意図)を出発点として、「リアルタイムテレメトリ」「アナリティックス&ML(機械学習)」「プロブラマブルワークフロー」「イベントドリブン」といった各種の手法を組み合わせて自動的に実現していく形をとる。実装面では、あらゆるタスクをまとめて扱うのではなく、上位レベルでの課題(サービスアロケーション、LSPバランシング。デバイスの健康状態、ピアリングを解決する「ネットワークボット/ソフトウェアインテントボット(“Health Bot”“Peer Bot”“NetSlicing Bot”“Elastic Broadband Bot”“CoreClos”)」として実装、これらが最上位のインターフェースと連携して所定のサービスを実現するというアーキテクチャが想定されている。

 自動車との比較では、エンジンやトランスミッション、ステアリング制御といったそれぞれの機能要素ごとにそれぞれ自動化を実現していくというアプローチだ。実際には、それぞれのソフトウェアインテントボットの実装状況がまちまちで、複数の機能が分離されずに残っている場合や、内部のアーキテクチャが未整理であることなど途上にある。だが既に製品として出荷されているものもあり、コンセプトの段階から既に実用段階に入っているという同氏の主張を裏付ける状況だ。

 現時点でのロードマップは、2019年第2四半期に、同社が現在想定している全てのプロセスに対応するソフトウェアインテントボットが出そろう予定。当初の構想発表から約2年が経過し、その間に人工知能(AI)/機械学習の急速な発展があったことで競合となる取り組みも多数出現している。今や「AIを活用してネットワーク運用管理の省力化を実現」というメッセージの新鮮みが薄れているが。同社が今後この分野で存在感を発揮するには、製品レベルでの完成度の高さが求められることになるようだ。

左が上位の視点から見た“実現したい機能”で、右が対応する“ソフトウェアインテントボット”を組み込んだ製品、という関係になっている(出典:ジュニパーネットワークス)
左が上位の視点から見た“実現したい機能”で、右が対応する“ソフトウェアインテントボット”を組み込んだ製品、という関係になっている(出典:ジュニパーネットワークス)

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