Teslaが出願した特許が先ごろ公開され、同社が工場での作業効率と生産性を向上させる手段として、拡張現実(AR)技術の利用を検討していることが明らかになった。
世界知的所有権機関(WIPO)に出願されたこの特許のタイトルは「製造過程に対する拡張現実の応用」となっている。
特許では、この技術について「物理環境の一連の画像を取得する。取得された一連の画像の中で少なくとも物体の一部を識別する。一連の画像を使用して、検出された物体に関連付けられた基準特性からのずれを検知する。またそのずれに関連付けられた情報を拡張現実デバイス経由で提供する」と説明している。
拡張現実システムでは、物理世界の物体に重ねて、情報、データ、画像が表示される。製造業でのARの応用例には、例えばリアルタイムに取扱説明書を表示させたり、センサーから得られた機器の状態に関するデータをフィードさせたり、工場内の活動に関する情報をユーザーに伝達したりといったことが考えられる。
「インダストリー4.0」(「スマートマニュファクチャリング」とも呼ばれる)と結びつけて語られることが多いARや仮想現実(VR)は、一般に製造のスピードや効率を向上させる有効な手段だと考えられている。
IDCは、2022年にはARおよびVRに対する一般消費者向け分野の支出が530億ドルに達すると予想しており、それに小売業、組立製造業、輸送・運輸業が続き、2022年でのこれら3分野の合計支出は560億ドルに達すると予測している。
Teslaの場合、それらの応用例を「Google Glass」などのARヘッドセットと組み合わせて利用することが考えられる。Google Glassは消費者市場では普及しなかったものの、ビジネス利用では徐々に広がりを見せている。
特許の出願明細書では、応用例として、従来は計測値のマーキングや部品の配置の決定に紙やプラスチック金型を被せて行っていた、部品の結合作業を挙げている。このような作業では、適切なARアプリケーションを使用することで、計測値を元に仮想的なオーバーレイを作成し、時間、材料、費用を削減することができる。
自動車の製造過程の場合、ARのオーバーレイを効果的に活用できる場面としては、例えばメカニカル部品の接続、ほかのポイントへの接続、スポット溶接、接着剤の使用部位などが考えられる。
特許では、TeslaのAR技術は、従来の保護眼鏡の代わりとなるヘッドセット、カメラ、その他の外部機器を使用することで導入できるとしている。
ただし、Teslaの工場でARを利用できるのは、人間の作業員だけではない。
出願明細書には、「例えばある実施形態では、ロボットに1つ以上の部品の組み立て方法をプログラムするのにARデバイスを使用でき、これには溶接、セルフピアシングリベット、レーザー溶接、接着、シーラー、穴、止め金具、その他のメカニカル部品接続の正確な場所や適用順序の指定とマーキングが含まれる」と記述されている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。