11月第4木曜日は感謝祭ですが、その翌日の“ブラックフライデー”から大規模なセールがスタートします。かつては1日限りのイベントでしたが、近年は1週間ほど続き、小売業者はクリスマス商戦の売り上げを獲得しようと躍起になっています。
英国に関する2017年の調査では、ブラックフライデーの週末における消費者の総支出額は14億ポンド(約2008億円)に達し、推計2億2500万個を超える小包が配送されました。Amazonの配送トラックは90秒ごとに出発し、郵便事業を担うRoyal Mailは従業員19万人に加え、1万9000人を動員して対応したといいます。
最近では当日配送を取りやめ、翌日配送を保証するオンライン小売業者が増加しており、限られた時間内に尋常ではない量の小包を届けなければならない宅配業者にとって大きな負担となっています。
ブラックフライデーは小売業者にとってチャンスであり、売り上げへのプレッシャーでもあります。一方で、宅配業者は休みなくセール商品の発送や配達に追われているというのが現状です。
スタッフの負担を最小限に抑制
ピーク時の配送センターといえば、小包がコンベアを行き交い、スタッフが死に物狂いで荷物を運び、梱包し、スキャンを繰り返すといった場面をイメージするのではないでしょうか。これはほぼ正解です。重労働の結果、傷病を訴えるスタッフがいるという事実も想像に難くないでしょう。実は頻繁にスキャンを繰り返すといった作業が、反復性ストレス障害を引き起こす原因となっているのです。
このようなトラブルを回避すべく、物流・倉庫業者は人間工学に基づき業務の効率化を目指すテクノロジへの投資を推進。スポーツ用品メーカー大手アシックスの欧州統括子会社、ASICS Europeは、ゼブラ・テクノロジーズのタッチモバイル端末「TC8000」を欧州各地の配送センターで導入し、1シフト当たり1時間以上の生産性向上を実現しました。勤務中に2400回ものスキャンを行うスタッフも、その快適性と負担軽減を評価しています。TC8000の大型スクリーンは、スキャンごとに画面を傾けて確認する必要がなく、バーコードの読み取り、チェックボックス、文字やサイン入力を同時に実行できるため、結果として疲労や傷病の低減に結び付きます。
一方、ID Logisticsはゼブラ・テクノロジーズのウェアラブル端末「WT6000」を導入し、倉庫内で作業するスタッフの生産性と効率性の向上を達成。従来のモデルと比べ27%軽量化、36%小型化された同端末には新固定システムが採用されており、使用するスタッフの快適性が上がりました。
スタッフの能力を最大限に発揮
テクノロジは世界中で倉庫効率に革命をもたらしています。人工知能(AI)の活用が拡大し、例えばネットスーパーのOcadoはロボティクスによる流通が実現しています。同様に、物流チェーンのあらゆるポイントで適切な調整やアップグレードを行うことによって、スタッフの効率、在庫管理の精度、サプライチェーンと顧客満足度を最大限化できるのです。
ゼブラ・テクノロジーズが実施した「フルフィルメントに関する展望調査」によると、RFIDテクノロジおよび在庫管理プラットフォームの採用は今後2~3年で49%増加する見通しです。RFIDを活用したソフトウェア、ハードウェア、タグ付けソリューションによって品目ごとに最新の在庫照会が可能となり、在庫切れや過剰在庫、補充ミスを回避し、在庫精度と顧客満足度を向上させることにつながります。
ゼブラ・テクノロジーズはとある倉庫において、RFIDとドローンを組み合わせた商品追跡テクノロジを提供しています。これによりスムーズな商品特定が実現しただけでなく、在庫管理の精度も劇的に上がりました。一方、ID Logisticsはウェアラブル技術とタブレット端末を活用することでバーコードのスキャン、データ入力、堅固な耐久性などに支えられ労働力の生産性向上を達成しています。
臨時スタッフが動員される繁忙期は、時間との闘いです。物流業者にとって、スタッフに簡単に操作方法を説明でき、エラー発生のリスクを低下させるテクノロジは必要不可欠であるといえます。大容量のバッテリによって長時間の使用が可能であること、そして頑丈さも忘れることはできません。これらの条件を全て満たす端末こそ、スタッフの効率を最大限化し、傷病を低減させるのです。ASICS EuropeおよびID Logisticsがサプライチェーンマネジメント強化のためにモバイル端末を採用した背景には、上記のような理由があるのです。
クリスマスへ向け、物流・小売業界は臨時スタッフを多数採用します。ゼブラ・テクノロジーズでは、臨時スタッフに対するトレーニングの迅速化と、彼らがより早く生産性を発揮できるよう、業界と連携し動画を使ったトレーニングの開発にも取り組んでいます。
物流を支える英雄を称えよ
小売りの形態が多様化したことにより、サプライチェーンはこれまでにない課題に直面しています。セールシーズンの繁忙期においても、物流業者がこれほどまで対応に追われたことはなかったでしょう。消費者がセールで商品を購入する時には、見えない場所で休むことなく働く数千人の人々(とテクノロジ)に感謝する瞬間があってもいいかもしれません。