マンガコンテンツ事業を手掛けるコミックスマートは、マンガ作品の閲読率を上げるレコメンドモデルを2カ月で構築し、新規にアプリをダウンロードしたユーザーの来訪率を向上させた。
同社は、マンガを中心とした自社IP(知的財産)の企画・開発を進めるとともに、マンガ家の育成・輩出や専門サイトの運営を主な事業としている。「インターネット発のスターマンガ家を支援・育成し、コンテンツ産業の新たなエコシステムを創る」というビジョンを掲げ、マンガアプリ「GANMA!」とマンガ家支援プログラム「RouteM」を展開する。
コミックスマート プラットフォーム部 プロダクト課 データサイエンティストの大藪真之祐氏
GANMA!の累計ダウンロード数は1100万を突破し、160超のオリジナル作品を提供中。主な収入源はアプリ内広告である。コミックスマートでは、マンガの閲覧履歴を機械学習に掛け、ユーザーが次に読む作品を予測する「作品レコメンドシステム」を構築した。
「ユーザーの併読数を高め、継続率を上げたいという目的があった。次にお勧めすべき作品を予測の対象にし、ユーザーの初日のマンガ閲覧データを活用して、アプリ内でユーザーにお勧め作品をメッセージ通知する仕組みだ」とコミックスマート プラットフォーム部 プロダクト課 データサイエンティストの大藪真之祐氏は話す。
ユーザーの読了状況を含めたデータから予測を実施し、過去のパターンから次に読む確率が最も高い作品をレコメンドする。従来のレコメンド方法と比べ、レコメンド作品の閲覧率が7倍、ユーザーの継続率が1ポイント、それぞれ上昇した。
読んだ作品の経路
このようにデータ分析や機械学習の活用を進める同社だが、「人的リソースが足りない」という大きな課題があった。実際、社内のデータサイエンティストは大藪氏の一人だけで、KPI/KGIの策定やレポートの作成、プロジェクトの提案などで手一杯の状況だった。しかも、同氏の前職はシステムエンジニアであり、データサイエンスの専門家ではなかった。機械学習について独学でいろいろと学んできたが、手探りの状態だったという。
そこで導入を決めたのが機械学習用プラットフォーム「DataRobot」になる。機械学習におけるモデル作成とモデルの実環境への配備を自動化することが可能で、作成したモデルをAPIを通して容易に実装できる点が特徴となっている。
コミックスマートの場合、DataRobotの利用開始からレコメンドモデルの施策展開までを約2カ月で完了させた。販売代理店のトランスコスモスが導入を支援した。
「DataRobotの導入目的を事前にしっかりと協議・整理したことが大きい。また、データマートの設計・作成に時間を掛けて熟考し、システム開発経験があったので実装がスムーズにいった」(大藪氏)
一方で、学習用データを準備するには、数十億行に及ぶデータ結合を繰り返して、作品経路を作成する必要があった。この処理には大きな負荷が掛かるが、Googleのビッグデータ分析基盤「BigQuery」を活用することで解決した。「特にチューニングしていないクエリでも30分程度で処理を完了できる」という。ちなみに、レコメンドモデルの作成には、過去90日分のデータを利用するとのこと。
レコメンドシステムの仕組み
今後の展開としては、ユーザー属性・ページビュー数・ユーザー数・売り上げなどの予測にもDataRobotを利用したいとする。また、社内での利用者拡大も検討しているとした。