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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

日本でどれだけシェアサービスを導入すれば中国並みになれるのか

山谷剛史

2018-12-26 07:30

 2018年も日本から多数の人が中国へ視察に向かった。「中国のハイテクがスゴイ」と言われて久しいが、今でも初めて中国を訪れる人は、目視でも分かる店舗のキャッシュレス決済用QRコードやシェアサイクル、シェアバッテリ、ガラス張りのカラオケボックスなどに驚く。最近、日本でも中国の影響を受けたとおぼしき新サービスが登場しているが、どこまで普及すれば中国並みに普及する実感を得られるのか。

 レストランや食堂の食事を電動自転車などで配達してくれるフードデリバリサービスに依存する人は珍しくない。具体的なプレーヤー(企業)としては、美団外売(Midea Waimai)と餓了麼(Ele.me)などが知られているが、そのサービス対応店舗(食堂・レストラン)数について指食針と再恵が調査レポートを発表した。

 都市別で見ると、2018年6月時点で上海は対応店舗が最も多く、餓了麼の登録店舗数は9万3300店、美団外売は7万9500店ある。内陸の農業省である江西省の省都南昌でも餓了麼は1万4800店、美団外売は1万4700店ある。また1カ月での都市別注文数は、上海では餓了麼は3475万件、美団外売は2916万件、北京では餓了麼は1763万件、美団外売は3399万件ある。上海の人口は2418万、北京の人口は2171万なので、1カ月に1人が1件以上を注文する計算となる。上海と北京以外では、深セン・杭州・南京・福州・蘇州・広州で人口を上回る注文数がある。天津や重慶は人口に対して少ないとあるが、それでも人口の2、3割程度の注文数はある。

 モバイルバッテリをスマートフォンアプリからレンタルできるシェアバッテリのスタンドは、ショッピングモール内の多くのレストランほか、路面店の食堂やホテルのロビーなどに設置されている。使い慣れているユーザーであれば、バッテリ残量が少なくても気軽に外出をし、ショッピングセンターに設置されたスタンドからシェアバッテリを借りて、別のスタンドで返すことが日常となる。利用金額は1時間で1元(16円)と気軽な値段だ。

 最大手の街電によると、2018年3月時点で200以上の都市に30数万台のシェアスタンド、140万個の専用モバイルバッテリが設置されているという。またユーザー数は6000万超で、1日の利用数は22万程度だとしている。街電のほかにも怪獣充電、小伝、来電といったサービスがある。街電ほどのスタンド数は設置されてないものの、アプリを新規にインストールする必要はなく、アントフィナンシャルの支付宝(Alipay)でQRコードをスキャンすれば手続きが完了する。ブランドを気にせずサービスを利用できる。つまり、サービスを提供するスタンド数は数十万台単位、モバイルバッテリ数は数百万個単位であるわけだ。

 ショッピングモールで目立つシェアサービスでは、カップルや子供連れの家族が入れる、ガラス張りのカラオケボックスがある。代表的なサービスの一つである「mida(口へんに米と口へんに達の字)」と「唱吧」によれば、2017年の段階で計1万3000台を投入したとしている。また同業のサービスの「wow」も同時期に計6000台を投入したとしている。他にも幾つか企業が参加しているため、中国全土で2万台以上があることになる。

 シェアサイクルは凋落ぶりが目立ってきたが、2018年8月の中国青年報の報道によると、この2年間で2000万台が投入されているという。

 シェアサイクルは膨大な投資をつぎ込んで生産し、街中に投入された。一方、シェアバッテリやカラオケボックスの一部は、「どれだけの期間で元手を回収し、もうけられるか」という投資目的で個人や企業が導入している。

 「シェアマッサージチェア」というものもある。マッサージ機に表示されたQRコードをスマートフォンで読み込んで決済すると動き出す仕組みだ。こちらも投資目的で導入する個人や企業がいる。しかしながら、「代理店が売り上げの分配金を払わず行方をくらました」「機器のメンテナンス費用がかさみ、もうからなかった」というニュースをよく目にする。

 中国全土で普及するフードデリバリも、中国人全体がフリーランサーのような考えを持ち、貧富の差が大きいからこそ、小銭を稼ぎたい人たちが配達をする。また、食堂やレストランも利便性を高めてもうけよう、世の中の流れについていこうとサービスに登録する。そういう無数のインフラがあって、気軽に頼んですぐに届く「当たり前」が実現する。

 日本では最近、QRコードによるキャッシュレス決済が話題になった。しかし、スマートフォンでの電子マネー利用はサービスの入口でしかなく、その後にサービスが続くことで初めて意義があると中国を見ていて思う。

 それでは、どれほどのサービスが投入されれば、普及したと感じられるのだろうか。中国は日本よりも国土が広く、人口が100万人以上の都市も多い。総人口は10倍以上の差がある。日本と中国を単純に比較できないが、中国と同様の状況を目指すのであれば、上述した10分の1の規模はないと実感できないのではないだろうか。

 キャッシュレス決済の先を普及させた中国の背景には、「貧富の差」「フリーランサーな国民性」「投資話を持ち掛ける有象無象」といった中国的な社会背景がある。なので、中国のハイテクサービスが普及する状況にあこがれて、中国式をそのまま導入しようにも限界がある。日本企業がどう「キャッシュレス後のサービス」を「普及」というレベルに持っていけるのか、その手腕が問われる。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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