ZDNet Japan Summit

デジタル化はエコシステムで牽引せよ-- ZDNet Japan Summit 2018基調対談

石田仁志

2019-01-04 08:00

 ZDNet Japan編集部は2018年12月4日、都内で初のプライベートセミナー「ZDNet Japan Summit 2018--攻めのIT経営を実現する4つのトレンド」を開催した。企業がデジタルを活用して新たな価値とビジネスを創出していくために必要な「攻めのIT」のアプローチについて、戦略・開発・インフラストラクチャ・現場改革の4つの視点から方法論を提示した。本記事では、カブドットコム証券 代表執行役社長の齋藤正勝氏とランドログCMOの木村宇伯氏、ZDNet Japan編集長の國谷武史(モデレーター)による基調対談の様子をお伝えする。

 基調対談のテーマは、「カブドットコムとランドログに聞く、デジタルによる新ビジネス創造の最前線」だ。デジタルを活用したビジネスでは、「プラットフォーム」「エコシステム」という2つの共通キーワードを見出すことができ、このキーワードをビジネスに落とし込んでいる2社がそれぞれ取り組みを紹介した。

業界に先駆けて証券APIを提供

 カブドットコム証券は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の大手インターネット証券だ。システム開発を内製する開発力を備え、サービス面では金融サービスにおけるオープンイノベーション基盤として「kabu.com API」を提供している。従来は証券会社のツールによって提供していた発注系、注文照会、残高照会、リアルタイム時価情報といった証券サービスの関連情報をAPI(Application Programming Interface)として提供するなど、デジタル・IT活用における最先端の取り組みを推進している。

カブドットコム証券 代表執行役社長の齋藤正勝氏
カブドットコム証券 代表執行役社長の齋藤正勝氏

 冒頭で齋藤氏は、金融業界におけるIT投資の現状を紹介した。日本では証券会社も銀行もシステム投資額が膨大であり、「メガバンクの投資は年間500億~600億円であり、毎年東京スカイツリーを建設しているような規模」だという。齋藤氏は、このシステム投資に本当に価値があるのか――と疑問を投げかける。

 米国など海外の金融機関のIT投資額も膨大だが、バックオフィスの勘定系システムは共同利用型で安価に利用し、「8~9割がミドル・フロント業務に関する投資で、競争力のある発注やユーザーインターフェースにお金を使う。これに対して日本の金融機関は、勘定系の独自開発に年間数百億円も使ってしまい、戦略的な投資が少ない」(齋藤氏)という現状だ。

 その状況でデジタル変革にうまく対応していけるのか――。例えばMUFGでは、「グループの中期経営計画の中で強烈に取り組もうとしている」(齋藤氏)と、視線を前に向けている。ただ、ここに日本のIT業界独特の構造的な問題があり、金融機関の多くは独立系ITベンダー(SI会社)にシステム開発を丸投げしてしまっている。ITベンダーで働くエンジニアの多くは文系出身者であり、その中で“デジタル”対応を任せなければならない点に不安があるという。

 齋藤氏は、そのような中にも、デジタル変革に向けて期待できる要素を提示してくれた。1つは、クラウドや人工知能(AI)などのITが、ビジネスを担うユーザー部門にやさしい存在となりつつあることだ。システム部門ではなく経営層やユーザー部門が直にIT活用に取り組むようになり、「デジタルトランスフォーメーションという言葉に実感が出てきている」(齋藤氏)

 もう1つは、FinTechである。金融分野の新しいテクノロジ活用という側面から、新興のベンチャー企業ばかりが注目されているが、齋藤氏によれば、株式の世界、金融の世界では、ある程度高齢者や富裕層をターゲットにしていかなければいけない。齋藤氏は、「ノウハウを持っている従来の金融機関、大手の金融機関が“技術武装”し、堂々と高齢者や富裕層に向き合ってマネタイズしていくチャンスが来ている」と自信を見せる。

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