Wandelbotsは、ドイツで最も著しい成長を遂げている新興企業の1つだ。同社は、コードを1行たりとも記述しなくても誰でもロボットのプログラミングができるようにしたいと考えている。ドレスデンを拠点とし、創業からたった1年で成功を収めた同社は、産業向けの自動化ソリューションという未開拓の巨大市場に取り組んでおり、最近シリーズAの投資ラウンドで600万ユーロを調達している。こうした市場はこれまで、オンサイトインテグレーションの専門家を投入できる大企業のものだった。
産業用ロボットの抱える根本的な問題は、作業を実行させたければ現在のところ、ハードコーディングするしかないというところにある。またそのプログラミング言語は、ロボット企業によって大きく異なっている、つまりKUKAやABB、ファナックのプラットフォームは、それぞれ異なったインターフェースを採用しているため、制御ソフトウェアのエンジニアリングにはそれぞれに固有のスキルを有した専門家が必要となる。また、工場のラインは頻繁に変更されたり一新されたりするため、プログラミング作業は多額の費用をかけて繰り返される。
提供:ZDNet.com
こういったことすべては、世界中のサプライチェーンにおける経済に大きな影響を及ぼしている。ロボットを工場のラインに加えるというのは、操業規模の大きな企業にのみ可能な選択肢であり、そうした企業であってもセットアップ時のコストの高さが障害となり、少量生産への導入には二の足を踏んでいる(多くの場合、原材料のコストも理由として挙げられる)。
Wandelbotsの最高経営責任者(CEO)Christian Piechnick氏は「ロボットは現在、少品種大量生産を継続している企業にしか導入できない」と述べたうえで、「コストの70%以上はロボットを制御するソフトウェアに直接関係するため、小量生産では魅力に乏しい」と述べている。
重工業向けではなく、部品の製造といったデスクトッププロダクションに適した小型の協働ロボットを製造している企業は、自社のプラットフォームにProgramming by Demonstration(PbD:デモンストレーションによるプログラミング)と呼ばれる機能を多かれ少なかれ導入している。それらほとんどのアプリケーションにおいて、ユーザーは自らの体を使い、タスクを実行する際の動作に合わせて、小型の協働ロボットを物理的に動かすことになる。ロボットが動作の順序を記憶した後、ユーザーはプログラミングインターフェースを用いてその動作経路や速度を調整し、パフォーマンスを最大化する。
PbDはまだ完成と言える段階にはないが、セットアップ時間やコストを削減するという点で、協働ロボットの導入を後押ししているのは間違いない。産業用ロボットはあまりにも巨大であり、しばしば物理的なウォークスルーに耐えられないような負荷を取り扱うこともあるため、依然としてコーディングが必要となっている。
Wandelbotsのソリューションは、センサを搭載した上着とグローブによって装着者の動きをリアルタイムで捕捉し、機械命令に変換するというものだ。
Piechnick氏は「われわれはスマート装具に基づいたロボット向けの汎用言語を開発した」と述べるとともに、「技術的、あるいは文化的なバックグラウンドに関係なく、実際にやって見せることで、誰でも最も自然かつ直感的なやり方でロボットを教育できる」と述べている。
同社初の製品である「Wandelbox」の持つ特長の1つに、手本となる動作を複数回やってみせることで指示を最適化できることが挙げられる。Wandelboxはユーザーの動作をただやみくもにまねるのではなく、機械学習(ML)能力を駆使してタスクとその目的に関する仮定を置き、最適化したソリューションを生み出そうとする。
さらに重要なのは、同社の言語がプラットフォームに依存しておらず、自動的にプラットフォーム固有のロボットへの指示コードに変換されるところにある。
Volkswagen Sachsenにおけるニューモビリティ&イノベーション担当の責任者Marco Weiß氏は「自動車業界が直面している急速な変化のなかで競争力のある製品を提供するには、製造工程の生産と自動化においてコストを削減しスピードアップを図ることが必要となっている」と述べている。
WandelbotsはVolkswagenと提携し、ドレスデンにあるVolkswagenのTransparent Factory内で人間とロボットによるコラボレーション(HRC)に向けたアプリケーションの探求を2017年から開始している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。