機械がさまざまなデザインを考案する「ジェネレーティブデザイン」の革新性

鈴木恭子

2018-12-28 16:50

 「既存のCADツールでは不可能だった幾何学的な設計が可能になる」――。

 PTCは11月23日に“ジェネレーティブデザイン”の技術開発を手掛けるFrustumを買収。Frustumは米コロラド州ボルダーを本拠地にする従業員14人の技術屋集団だ。PTCは同社の買収に約7000万ドルを投じている。

 ジェネレーティブデザインとは、設計者がコンピュータに一定の設計仕様を入力するだけで、その制約に応じた設計案を自動で生成する技術を指す。

 たとえば、軽量化を図るため、これまでアルミニウム素材だったパーツを合成樹脂に置き換えるとする。その場合、従来であれば、耐久性や耐荷重性などを計算し、設計をし直すといった作業が必要だった。これに対し、ジェネレーティブデザイン技術を活用すれば、設計者は使用する材料や重量、製造方法などを指定するだけで、さまざまなデザインを“考案”して提示する。

 ジェネレーティブデザインを活用することで、企業は軽量で耐久性の高い高性能設計、より安価な材料の活用によるコストの削減、製造サイクル時間の短縮といったメリットを享受できる。「既成概念」や「過去のデザインを踏襲する」ことがまったくないため、人間では考えつかないような形状をデザインするのが、ジェネレーティブデザインの特徴だ。

AIによるジェネレーティブデザインの一例
AIによるジェネレーティブデザインの一例
米PTC CTO室マネージングディレクター兼CAD・PLM事業CTO  Steve Dertien氏
米PTC CTO室マネージングディレクター兼CAD・PLM事業CTO Steve Dertien氏

 Frustumは、こうしたジェネレーティブデザインに人工知能(AI)を組み込んだ技術を開発している。これにより、これまで設計者が明確に指定していた設計条件や要件を、ある程度の範囲を持って指定するだけでコンピュータが最適な値を自動で計算し、最適な形状を導き出す。

 PTCでは「設計の早い段階で設計者に推奨変更個所のフィードバックをしたり、設計を最適化して複数の目標を同時に達成したりできる。設計者はコンピュータが導き出した何百通りのデザイン(設計オプション)の中から最適なものを選択し、反復や検証といった次のフェーズにすばやく移行できる」と説明する。

 12月14日にPTCジャパンが開いた会見で米PTCでCTO室マネージングディレクター兼CAD・PLM事業の最高技術責任者を務めるSteve Dertien(スティーブ・ダーティン)氏は、「ジェネレーティブデザイン技術は今後、(製造における)鍵となる技術だ。20年来の課題であった設計サイクル時間の低減を実現すると同時に、既存のCADツールでは不可能だった幾何学的な設計が可能になる」と説明する。Frustumの技術は、PTCの3D設計システムである「Creo」の次期以降のバージョンとなる「Creo 7.0」に順次実装する予定だ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Pマーク改訂で何が変わり、何をすればいいのか?まずは改訂の概要と企業に求められる対応を理解しよう

  2. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  3. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  4. セキュリティ

    AIサイバー攻撃の増加でフォーティネットが提言、高いセキュリティ意識を実現するトレーニングの重要性

  5. セキュリティ

    クラウド資産を守るための最新の施策、クラウドストライクが提示するチェックリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]