メール配信システムを中心とした企業向けのメッセージングサービスを提供するユミルリンクは、これまで利用してきた「VMware Data Protection(VDP)」によるバックアップから、新たにVeeam Softwareによるバックアップシステムを採用した。VMwareをはじめとした仮想化環境のバックアップソリューションとして定評のあるVeeam Softwareは、同社にどのようなメリットをもたらしたのか。ユミルリンクに聞いた。
大量のメールを高速・確実に届ける
大手顧客を中心に大規模メール配信サービスなどを手掛けるユミルリンク
ユミルリンクのサービスは、端的に表現すれば、「メールマガジンなどの大量のメールを配信する」というものだ。ただし、その量は膨大であり、いうほど簡単な話ではない。
例えば、同社の顧客企業である「TSUTAYA」や「Tポイントカード」を手がけるカルチュア・コンビニエンス・クラブでは、2017年9月に「Tカードの年間利用会員数が日本総人口の50%を突破」したと発表している。この全員がメルマガを購読しているとは限らないにしても、同社では実際に数千万通を一斉に配信するケースもあるとのこと。現在は約1400社の顧客を擁し、月間42億通のメールを配信する。配信規模は一時間当たり700万通に達するという。
企業が配信するメールには、キャンペーン情報などの購読者にとって価値ある情報が含まれている場合が多く、かつ、その価値が高いほど到着時間の遅れに対する反応もシビアになってくることから、大量のメールを一斉に配信できるサービスが求められる。逆に、地方自治体などでは災害発生時の避難勧告など、即時性が極めて重視される用途に同社のサービスを活用している例もあるという。日本を含むアジア圏で最大級のメール配信事業者として、質/量ともに最高レベルのサービスを提供しているといえるだろう。
また、企業が配信するメールは単なる情報発信のための一方通行のメディアではなく、購読者の反応を直接知ることができる双方向のマーケティングツールとしても機能している。同社では、単にメールを配信するだけではなく、メール内に記載されたURLがクリックされたかどうか、「クリック開封率測定」などのサービスも提供しており、ユーザー企業にとって重要なデータの収集を行っている。昨今大流行中の人工知能(AI)マーケティング分野における活用は、まさにこうしたデータを学習させることから始まるため、その観点からも今後ますます重要性が高まっていくサービスであろう。
同社のシステムは、基本的には顧客企業ごとに独立したメールサーバを仮想環境上に準備し、提供している。この仮想サーバには、メールサーバが出力するさまざまなログが記録される。どのアドレス宛にメールを発信したのか、エラーメールが返ってきたかどうか、といった基本的な情報から、前述のような「メール内のリンクがクリックされたかどうか」といった情報も、全てログとして仮想サーバに保存されている。
この情報がいわば「宝の山」であることから、絶対に失ってはいけない重要情報としてバックアップの対象となる。そこで同社では、仮想サーバ単位によるバックアップを行っている。