本連載では、筆者が「気になるIT(技術・製品・サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、日本IBMが金融機関などとサービス推進の検討を始めた「会計データ・オン・クラウドプラットフォーム」を取り上げる。
金融機関など52社とプラットフォーム作りへ
日本IBMが先頃、中小企業・小規模事業者の財務や会計データを金融機関にデジタルデータとして提供できるようにする「会計データ・オン・クラウドプラットフォーム」について、金融機関や会計ソフトメーカー、企業財務システムベンダーなど52社と検討を開始すると発表した。
これにより、クラウドとAPIを活用し、金融機関内での財務データの取り扱いに関する事務効率化の実現、融資審査の迅速化・高度化を目指す構えだ。
日本IBMによると、今回の取り組みの背景には、次のような問題がある。
現在、中小企業・小規模事業者やその顧問税理士から金融機関へ決算書を提示する場合には、紙の決算書を提供する。中小企業・小規模事業者やその顧問税理士は会計ソフトを利用して作成した決算書を印刷して提出する。一方、金融機関ではシステムに登録するために紙の決算書をスキャニングし、その後、事務センターで登録するなど多大な作業が発生している。
また、紙の決算書を提出するための移動時間も必要となり、審査の早期化を難しくしている。こうしたことから、事務効率化、融資審査の迅速化や高度化とともに、営業担当者の働き方改革を支援する仕組みが求められている。
そこで、日本IBMでは金融機関などと、クラウドとAPIを活用した「会計データ・オン・クラウド」の実用化に向けて、業務の流れ、システム要件、APIの有効性などを検討。クラウドやAPIを活用して早期にサービスを開始するとともに、データ連携の仕組みを柔軟かつ容易に構築することを目指す。本プラットフォームは2020年からのサービス開始を目標に検討を進めていくとしている。(図1参照)

会計データ・オン・クラウドプラットフォームの概要(出典:日本IBM)