IBMは、研究者や企業向けに設計された単体で動作可能な汎用量子コンピュータ「IBM Q System One」を発表した。
IBM Q System One
提供:IBM
CES 2019では、このシステムのレプリカがお披露目される予定だという。同社はまた、2019年中に米ニューヨーク州ポキプシーに「Q Quantum Computation Center」を開設することも明らかにしている。
IBMは量子コンピューティングの分野で先行してきた企業の1つだ。量子コンピューティングを実現するには、量子ビットを利用する新たなアプリケーションの開発や、連続的な極低温環境や新たなハードウェアアーキテクチャの構築などの課題がある。このため、量子コンピューティングはサービスとして、あるいはクラウドで提供される可能性が高い。
実際IBMは、2016年5月に、クラウド経由で誰でも同社の量子プロセッサを利用できる「IBM Q Experience」の提供を開始している。このサービスはこれまでに10万人に利用され、第三者によって130本以上の研究論文が発表されている。
IBM ResearchのIBM Qストラテジーおよびエコシステム担当バイス・プレジデントBob Sutor氏は、商用量子コンピューティングサービスの活用方法を探求するコミュニティーである「IBM Q Network」とQ Quantum Computation Centerは、IBMによる量子コンピューティングの商用化に向けたより本格的な取り組みとして位置づけられると述べている。例えば、Q Networkに参加するJPMorgan ChaseやDaimlerなどの企業は、IBMの研究者と直接やりとりしながら、さまざまな問題やスケーリングアルゴリズムに取り組んでいる。
IBMが量子コンピューティングを手掛けているのは、さまざまな業界の高度な問題を解決することができるためだ。
量子コンピューティングの開発はまだ初期段階にあるが、IBMのQ Quantum Computation Centerでは、企業や研究者が量子コンピューティングのより実用的な利用法を模索できるようになる。Q System Oneでもっとも注目すべき点は、これが量子コンピューティングのスケーリングの問題に対する解決策の最初期のテンプレートであることかもしれない。
Q System Oneは、ガラスで密封された気密環境内に設置されている。これは、環境雑音や振動、温度変化、電磁波などによる影響を最小限に抑えるためだ。
Q System Oneが構築される様子。
提供:IBM
Q System Oneは、高さ9フィート(約2.7m)、幅9フィートの、ホウケイ酸ガラス製ケース(ガラスの厚さは0.5インチ--約1.3cm--)に収納されている。メンテナンスやアップグレードを簡単にするため、この筐体はモーターによって簡単に開くようになっているという。
将来は、Q System Oneやその後継機種が一般のデータセンターにも導入されることになるのだろうか?おそらくその可能性は低いだろう。Sutor氏は、技術があまりにも急速に進歩しているため、もしデータセンターにQ Systemを導入すれば、頻繁にIBMを呼んでシステムをアップグレードする必要が出てくるだろうと話す。同氏は、「この技術は急速に進歩しているため、当面はオンプレミスに導入するのは合理的ではないだろう」と述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。