本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEOと、米AccentureのPaul R.Daugherty 最高技術責任者兼最高イノベーション責任者の発言を紹介する。
「今回の買収で利益率の高いビジネスモデルへの転換を加速させたい」
(NEC 新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEO)
NECの新野隆 代表取締役 執行役員社長兼CEO
NECが先頃、デンマーク最大手のIT企業であるKMDを買収すると発表した。新野氏の冒頭の発言はその発表会見で、同社のビジネスモデル転換への決意を述べたものである。
発表の概要については関連記事をご覧いただくとして、ここでは、新野氏がこの買収の基となる事業戦略について説明したので、その内容を紹介したい。というのも、「NECはこれからどうやって稼いでいこうとしているのか」と、あちこちで聞かれるからだ。
新野氏はまず、今回の買収に関わるグローバル展開において、セーフティ事業を成長エンジンと位置付け、2017年度で約500億円だった海外売上高を2020年度で2000億円に引き上げるという目標を説明。この目標に向けたM&A(合併・買収)の第1弾として2018年1月に英国Northgate Public Services(NPS)を買収し、続いて今回、第2弾の買収となった。
同氏はさらに、こうした買収によって、売り上げの伸長だけでなく利益率の向上を図るために、水平展開可能なプラットフォーム事業を整備・強化していくことを打ち出した。
では、NECが注力するプラットフォーム事業とはどのようなものなのか。下図が、そのビジネスモデルを描いたものである。同社が考える3層のプラットフォームによる新たなビジネスモデルは、下から、さまざまなデータを収集・統合する「データプラットフォーム」、データの解析や将来の予測を行う「分析プラットフォーム」、水平展開可能な共通業務機能の「共通業務プラットフォーム」と積み上がっている。
図:3層のプラットフォームによる新たなビジネスモデル(出典:NECの資料)
この中で、NECが強みとするのは、世界でナンバーワンやオンリーワンの技術を保持する生体認証「Bio-IDiom」や人工知能(AI)技術群「NEC the WISE」を活用できる分析プラットフォームである。従って、分析プラットフォームを生かせるデータプラットフォームと共通業務プラットフォームの中身をどれだけ拡充していけるかが、このビジネスモデルのポイントとなる。
その中身となり得るのが、まさしく今回買収したKMDや第1弾のNPSが展開する事業である。新野氏は「当社が得意とする分析プラットフォームとうまくシナジー効果を出せることが買収の基本にある」と語った。その上で、「これまでの個別SIの売り切り型ビジネスから、こうしたプラットフォームを活用したビジネスモデルに転換し、利益率を向上させていきたい」との決意を示した。
「NECはこれからどうやって…」と聞かれたら、まずはこのビジネスモデルの図を見せることにしよう。思惑通り稼げるようになるかは未知数だが、このモデルに同社の“浮沈”がかかっていることだけは間違いない。