IoTセンサーによって都市の効率的な運営が可能になりつつあるが、それによって都市経営に新たに複雑な問題が生まれていることも確かだ。この技術はあまりにも急速に変化しているため、都市計画の担当者や公益企業が、新たなセンサーの導入が既存のセンサーの運用にどのような影響を与え、戦略がどのように変化し、将来のニーズに対して技術がどの程度ついていけるかを予想するのが難しくなっている。
IoT導入の影響を検討するにはシミュレーションが役に立つはずだが、これまで、実際の複雑な都市を信頼できる形で仮想現実で模倣することは、技術的に不可能だった。しかし、Microsoftが「Azure Digital Twins」と名付けた新サービスは、この問題を解決できるかもしれない。
MicrosoftのAzure Digital Twinsを担当するグループプログラムマネージャーBert Van Hoof氏は、「Azure Digital Twinsは、デバイスと物理世界のコンテクストを結びつける包括的なデジタルモデルを提供することによって、IoTソリューションをシンプルにする」と述べている。「シミュレーションされた環境で、都市がどのように改善されるかが明らかになるため、ユーザーは、導入を検討している技術について、情報に基づいて判断を下すことができる」
Azure Digital Twinsのプラットフォームを利用すれば、交通状況や建築材料、デバイスなどに加え、人間までもを変数として組み込み、その間にある関係性や相互作用をモデル化することができる。Microsoftは、「この空間インテリジェンスプラットフォームには、物理世界の仮想表現や業界に合わせたコンテクストアウェアなソリューションを構築するための、あらかじめ定義された拡張可能なツインオブジェクトモデルが用意されている」と説明している。
CES 2019では、エネルギー資源や水資源のマネジメント製品を提供するテクノロジ企業であるItronが、Azure Digital Twinsプラットフォームのパブリックプレビュー版を使って、ロサンゼルス近郊のダウンタウンのシミュレーションを展示していた。来訪者が「Microsoft HoloLens」を身につけると、仮想的に交通パターンを変更したり、センサーを取り付けたり、建築材料を変更したりすることが可能で、地形を入れ替えることさえできるようになっていた。このシミュレーションでは、変更を加えると、その変更が人間や建物、自動車、あるいは環境全体にどのような影響を与えるかを視覚的に見ることができる。
まるでゲームの「シムシティ」のようだが、この「ゲーム」は近い将来、スマートシティの機能に関する重大な意思決定を下そうとする際に利用されるようになるだろう。Itronのアイデアラボは、早い段階からAzure Digital Twinsを導入している組織の1つで、Microsoftの重要な味方だ。同社は現在、100カ国以上の地域コミュニティで、水道や公益事業などの重要インフラサービスの提供を支援している。
ItronアイデアラボのディレクターRoberto Aiello氏は、「Itronアイデアラボでは、新しく大胆なソリューションを実現するために、拡張現実などの新技術を利用した画期的なコンセプトを模索している」と述べている。「われわれは、我が社のビジョンとMicrosoftの技術を組み合わせることで、CESで素晴らしいシミュレーションを提供できることを嬉しく思っている」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。