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ITの基本戦略を設定(7):コアケイパビリティ強化への貢献がミッションの前提

宮本認(ビズオース )

2019-01-12 07:00

(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」から転載、編集しています)

 IT部門は何をミッションとするのか。日本企業の場合、消去法的になるが、コア機能の組み立て、すなわちバリューチェーンのどこかを強化するのが望ましいということとなる。経営が強みとするところ、競争優位とすべきところの強化に貢献することにこそ存在意義がある。

 コア機能は、製品・サービス(開発部門)、営業、生産・運用のいずれかである。『ナンバーワン企業の法則』という本が昔あったが、そこでは「Innovative Product」「Customer Intimacy」「Operational Excellence」と呼んでいた。要は、優れた製品を世の中に提供することで売り上げを稼ぐのか、営業がとにかく売り切ることで事業を成立させるのか、圧倒的な低コスト運用で利益をたたき出すのか、あるいはその幾つかを組み合わせるのか、である。

 IT部門にとっては、利益の源泉、すなわち強みの源泉に力を入れるべきだし、逆に弱みにこそ注力するという発想もある。要は逆張りだ。しかし、このコア機能の選択は、IT部門のもう一つのミッションを定める。すなわち、どの業務やシステムを強化するかである。コア機能は、IT部門が持つべきコアケイパビリティを決定する。予算や人材の配分を決定する軸となるのだ。当然、全部やるという発想はある。

 かつて、筆者がまだまだ駆け出しのころ、米国の大手化学企業のIT戦略の事例をくまなく勉強していた時期があった。非常によくできたIT戦略で、今でも通じるくらい骨太な考え方に沿って作られていた。その化学企業のIT戦略は、まさに上述の3つの戦略を同時並行的に推進するものだった。

 Innovative Productをどんどん出させるために、個人の生産性を最大化すべくKnowledge Managementを促進する、Customer Intimacyを向上させていくために顧客管理システム(CRM)を刷新する、Operational Excellenceを追求するために電子商取引を積極的に進める、サプライチェーン管理(SCM)を変え、Shared Service Centerを物流、生産技術、経理、人事、ITなどの分野で創設するとともに上述の最高財務責任者(CFO)主導のマネジメントを強化するために統合基幹業務システム(ERP)を刷新するという、現代の経営改革手法を網羅的にとらえたものだった。ちなみに、この改革をやり遂げた最高情報責任者(CIO)は、一つ格下の化学企業へ転身したことは言うまでもない。

 トップ企業であるならば、上述の化学企業のように、全ての領域に人材と予算を割り振っていくべきだろう。トップ企業であるからには、そうした覚悟を持って挑むべきともいえるし、だからこそトップ企業ともいえる。

 しかし、そうではない多くの企業は、前に取り上げた流通業C社のように割り切るべきである。C社の場合、Operational Excellenceの、しかも一部の店舗情報系機能に割り切って、ITの機能と組織を再構築した。それ故にコスト面で大きな貢献をもたらし、ユーザーのやりたいことに極めて高速で対応できる、すごいIT部門となっている。

 強調するが、コア機能を中心にITの構成を組み立てるのだ。例えば、営業が強いならば、顧客データベースが統合されていない、情報が整っていないのはいただけない。製品力で突破を図るならば、サプライチェーンを整備するよりも商品情報管理(PIM)を整え、売り切りモデルを構築した方が効果的な場合が多い。

 Operational Excellenceならば、調達データベースを整備し、買い手の交渉力を高めることに注力していくべきだろう。いずれにしても、コア機能というのは、汎用品で戦うことが難しい領域である。なぜなら、コアであるが故に汎用品が持っている情報や機能では足りないことが往々にしてあるからだ。

 ただ、汎用品でダメだというわけではない。「うちは営業が強い」と思っていても、世の中のレベルから見れば「普通」、あるいはそれ以下ということも往々にしてある。大切なのは、世の中全体で見たときのレベル感がITの世界では必要だということだ。

宮本認(みやもと・みとむ)
ビズオース マネージング ディレクター
大手外資系コンサルティングファーム、大手SIer、大手外資系リサーチファームを経て現職。17業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。金融業、流通業、サービス業を中心に、IT戦略の立案、デジタル戦略の立案、情報システム部門改革、デジタル事業の立ち上げ支援を行う。

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