本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、リコージャパンの坂主智弘 代表取締役社長執行役員CEOと、インサーの横地俊哉 代表取締役CEOの発言を紹介する。
「新製品によって中小企業の生産性革新に貢献したい」
(リコージャパン 坂主智弘 代表取締役社長執行役員CEO)
リコージャパンの坂主智弘 代表取締役社長執行役員CEO
リコーが先頃、複合機とクラウドサービスを連携させた新ソリューション「RICOH Intelligent WorkCore」を発表した。その国内販売を手掛けるリコージャパンを率いる坂主氏の冒頭の発言は、発表会見で新製品の狙いについて語ったものである。
新ソリューションの中身は、新たに発売する複合機「RICOH IM Cシリーズ」7機種16モデルと、クラウドプラットフォーム「RICOH Smart Integration(RSI)」を介して提供する各種クラウドサービスを組み合わせたものである。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは坂主氏が会見で説明した中小企業のさまざまな課題について取り上げておこう。
同氏が挙げたのは、中小企業における「経営課題」「IT利活用」「オフィスワークの実態」の3つ。1つ目の経営課題については、「人手不足が経営上の課題として強く認識されている」。中小企業庁の調査結果から、全ての業種において従業員数が2009年をピークに減少傾向にあることを説明した。
2つ目のIT利活用については、「ITによる業務効率化の余地が残っている」。全国中小企業取引振興協会の調査結果から、「十分利活用している」と回答した企業の比率において、一般オフィスシステムと電子メールで55%前後、経理ソフトで約40%、ERP(統合基幹業務ソフト)やEDI(電子データ交換)で約20%との実態を紹介した。
そして3つ目のオフィスワークの実態については、「企業間および企業内の業務には多くの紙が存在する」。リコージャパンにおいて年商50億円未満の顧客企業約80万事業所で利用されている複合機のリモートデータからドキュメントの使用状況をまとめたところ、2007年から2018年にかけての入出力ドキュメント枚数の伸び率は101.3%となり、紙原稿比率も57%を占めた。(図)
図:中小企業のオフィスワークの実態
坂主氏はこの結果に、「この10年ほどは電子化が進んでオフィスでもペーパーレスが盛んに言われたが、それとは裏腹に、中小企業では紙が増えていることが分かった 。しかも紙原稿比率は6割近くを占めている。この原因は、中小企業の場合、特に企業間のドキュメントのやりとりがまだまだ紙中心で行われているからだ」との見解を示した。
そして、「そうした状況を打開するためにも、中小企業では限られた人員と時間での生産性の革新が急務となっている」と訴えた。同社ではこの使命感を持って、坂主氏の冒頭の発言を遂行していく構えだ。