本連載では、筆者が「気になるIT(技術・製品・サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、日本IBMが先頃提供開始したビジネスインテリジェンス(BI)ソフト「IBM Cognos Analytics」最新版である。
エンタープライズBIとセルフBIを融合
会見に臨む日本IBMの村角忠政IBMクラウド事業本部アナリティクス事業部Product&Solutions統括部長
「CognosはエンタープライズBIとセルフBIを融合し、デジタルトランスフォーメーションを支える統合BIプラットフォームへと進化した」――。日本IBMの村角忠政IBMクラウド事業本部アナリティクス事業部Product&Solutions統括部長は、同社が先頃提供開始したBIソフト「IBM Cognos Analytics」最新版の記者説明会でこう胸を張った。
Cognosはデータ分析を行うBIソフトとして50年の歴史があり、グローバルで今も多くのユーザーが利用している。2008年にはIBMが買収した。今回の最新版の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは村角氏が挙げた「エンタープライズBI」と「セルフBI」という2つの言葉に注目したい。
図1:エンタープライズBIとセルフBIの違い(出典:日本IBM)
図1が、その2つの言葉を説明したものである。加えて村角氏は、企業が保有するデータを分析するソフトとして古くから使われてきたのがエンタープライズBI、それに対して、ここ数年、ベンチャー企業を中心として使いやすさを売り物に登場してきたのがセルフBIと、両者の違いを分かりやすく説明した。
さらに、使い手と目的という観点からすると、データ分析の専門家が経営の意思決定などを目的に使うのがエンタープライズBI、それに対して、誰もがそれぞれの目的でデータ分析を行えるのがセルフBIとも解釈できるだろう。
ただ、図1にはそれぞれのウイークポイントが記されていない。そこで、筆者がこれまでこの分野の取材で聞いてきた中から挙げてみると、エンタープライズBIは「重厚すぎる」「高価」「データ分析の専門家しか使えない」といったところか。これに対し、セルフBIはその裏返しで登場してきたわけだが、企業で使用する場合、「ソフトによって性能・機能にバラツキがある」「使用時のガバナンス上の問題がある」との指摘を耳にした。
今回のIBM Cognos Analytics最新版は、村角氏の冒頭の発言にあるように、両方の長所を生かしながら短所をカバーする形で「融合」を実現したというのが、最大のアピールポイントである。
10年前に起きていた「セルフBI」の胎動
実は、エンタープライズBIとセルフBIについてここで取り上げたのは、筆者にとって「いつか聞いた話」だったからだ。
ちょうど10年前、当時ホットな話題になっていたBIについて取材を重ね、複数のメディアで記事を書いた記憶がある。なぜ、ホットな話題になっていたか。要因は大きく2つあった。