ヴィーム・ソフトウェアは1月29日、バックアップ/リカバリ基盤製品の最新版「Veeam Availability Suite 9.5 Update 4」などを発表した。クラウド環境を活用したデータのバックアップ/リカバリ機能を強化し、ライセンス体形などもこれに変更、製品は近日中に提供を開始する。
Veeam Availability Suiteは、オンプレミス/クラウド環境における包括的なバックアップおよびリストア、データの管理機能などを備える基盤製品。最新版では、オプジェクトストレージへのネイティブな対応、オンプレミス/クラウドの円滑なデータ移動、セキュリティおよびコンプラインスに基づくリカバリ機能の強化を図った。
オプジェクトストレージへの対応では、Amazon Web Services(AWS)のS3(Simple Storage Service)、Microsoft AzureのBlob Storage、IBM CloudのObject Storageを含むS3互換のクラウドのオブジェクトストレージサービスとの円滑な連係を可能にした。これにより、最新のアーカイブデータをユーザーの手元に保管しつつ、それ以前の複数世代のアーカイブデータをオブジェクトストレージ環境に保管できる。また、リストア時にオブジェクトストレージから差分データのみを抽出し、最新のアーカイブデータに統合してリストアする機能も提供。リストア時におけるデータのネットワーク転送コストを抑制するという。
オブジェクトストレージへの対応を図りネイティブな統合を可能にするという
オンプレミス/クラウドの円滑なデータ移動においては、従来のAzureに加えてAWSとAzure Stack間におけるワークロードの移動、バックアップ、リカバリができるようになった。マルチクラウド環境でのワークロードの可搬性を向上させることにより、災害時などにおける事業継続やシステムの復旧体制を強化するとしている。
ワークロードの“可搬性”においてAWS、Azure、Azure Stack間の移動に対応した
セキュリティおよびコンプラインスに基づくリカバリ機能では、個人情報などを含んだシステムのテスト環境あるいはバックアップデータを本番環境に展開したり、あるいはリカバリさせたりする際に個人情報などを削除する。また、バックアップデータをリストアする際にウイルス対策ツール(Windows Defender、ESET、Symantecに対応)でスキャンできるようにした。これにより例えば、マルウェアプログラムが添付された恐れのあるメールのアーカイブデータをリストアするような場合に、事前に安全性を確認できるほか、個人情報を含むデータが思いがけず本番環境に展開されてしまうような危険性を低減する。
コンプライアンス/セキュリティ面では、リストア時にリスクとなりがちなセンシティブなデータやマルウェアの存在を確認できるようにした
この他に、2018年1月に買収したN2WSのテクノロジを活用する新製品「Veeam Availability for AWS」も発表。AWSのワークロードのバックアップとリカバリがより簡素化される。また、ライセンス体形を改め、1つのライセンスをオンプレミス/マルチクラウド環境などで柔軟に使用できるようにした。
同日記者会見した執行役員社長の古舘正清氏は、同社の事業戦略における重点分野を以前から強みとする仮想化環境のバックアップからマルチクラウド環境のデータ管理に拡大させると説明。ユーザー側の課題としては、従来のシステムの分断化に伴う非効率的かつ不十分なデータ保護に加えて、昨今ではパブリッククラウドの利用拡大に伴う新たなバックアップ体制の整備、さらにはマルチクラウド環境を見据えたセキュリティおよびコンプライアンスの備えが具体化しているという。
今回発表したVeeam Availability Suite 9.5 Update 4などの製品群は、こうしたユーザーの課題解決を目指したリリースになるとしている。