そこからThinkPadの開発哲学を盛り込んだ試作機をグローバルで10社ほどに提供し、概念実証(PoC)を重ねて改善箇所を洗い出した。日本では住友商事マシネックスと共創プロジェクトを実施した。
PoCのフィードバックとして、「当初は各種ポップアップを提示していたが、会議実施中は煩雑になるといった意見をいただき、ユーザビリティを改善」(元嶋氏)した。ThinkPad Hub 700はグローバル市場に投入予定だが、元嶋氏は「大和研究所という日本国内開発の利点を生かして最適化を図り、顧客需要をクイックに反映するアジャイルスタイルで取り組む」とアピールする。
レノボ・ジャパン コマーシャル事業部 企画本部 製品企画部 プロダクトマネージャー 元嶋亮太氏
ThinkSmart Hub 700はOSであるWindows 10 IoT Enterpriseを生かして、ディスプレイにHDMIや無線LAN経由で最大4画面を同時表示する「コラボレーション」と、USBやHDMIに接続して専用マイクロフォンスピーカーとして稼働する「パススルー」の2モードを備える。オンライン会議サービス「Zoom Video Communications」「Skype for Business」に対応し、「今後の更新でUC(ユニファイドコミュニケーション)プラットフォームの拡充を続ける」(元嶋氏)という。
同製品の利用にはディスプレイやプロジェクタが欠かせないが、インターフェースはフロント側にUSB×2とHDMI×2、リア側にHDMI×2やEthernet、USB×2を供える。本体頭部にあるタッチ&リンクはホイール操作でスピーカー、2つのボタンでセレクトやキャンセルできる。
アルミニウム製の本体には5000を超える無数の穴を供えるが、一部は赤外線人感センサ×6を内蔵し、360度をカバー。「会議室へ人が入ると本体がスリープから復帰。また、ダッシュボードで会議室の利用率を可視化できる」(元嶋氏)という。
レノボ・ジャパンが独自開発したダッシュボード「ThinkSmart Console」はクラウド上で動作する。ネットワークやアカウント設定、ルームカレンダーの設定といった展開、インシデントやセキュリティ、アップデート管理となる運用フェーズ、会議室利用状況や会議サービス利用状況、ユーザー設定を含むモニタリング機能を備える。
デバイス開発にも注力し、「(内蔵する)大型スピーカーが震動してノイズが発生しやすい。マイクとスピーカーの分離、話者の距離によってゲインやエコーを内部で減算処理する」(熊木氏)という。ThinkSmart Hub 700はCPUにCore i5を搭載しているが、「排熱処理の問題が発生するため、サーマルモジュール化した大型ファンを搭載。回転数を落としてノイズを軽減している」(熊木氏)といった細部にわたるこだわりを見せた。
ThinkSmart Hub 700の内部構造
レノボ・ジャパンはオンライン会議システムの端末に対して、「『設定や操作が分かりにくい』『コンテンツが共有しにくい』『音声がクリアではない』といった声をいただく。これらの課題を解決するために、直感的な会議参加体験と管理者向けダッシュボード、HDMI/ワイヤレス両対応と柔軟性の高い共有機能、4マイク×4スピーカー搭載。Audio Firstの筐体設計で対応した」(元嶋氏)と語る。
専用クライアントはWindows版とAndroid版のみ提供するが、日本におけるスマートフォン市場を鑑みる同社は「iPhone(版クライアントの開発も)検討中だが、現段階では非対応」(元嶋氏)と説明した。