Bill Gates氏とMelinda Gates氏によると、2018年の主な出来事は予期していなかったものばかりだという。
Bill Gates氏とMelinda Gates氏
提供:Fabrice Coffrini / AFP/Getty Images
慈善事業に取り組むGates夫妻は米国時間2月12日、2019年の年次書簡を公開した。壊滅的な自然災害や米中間選挙で記録的な数の女性が立候補したことなど、さまざまな出来事を挙げ、2018年は「驚きの連続」のように感じたと述べた。
ソフトウェアの起業家から慈善活動家に転身し、世界長者番付で長年首位を維持していたBill Gates氏は2000年、夫人とともにビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立し、自らの莫大な資産を世界中で医療向上や貧困削減の取り組みに寄付している。
2019年の書簡では、2018年に両氏を驚かせた9つのことが取り上げられている。両氏に不安を抱かせるものもあれば、良い刺激をもたらすものもある。Gates夫妻は、それらが人々を行動に駆り立てると期待している。その一部を以下で紹介する。
家庭用DNA検査キット
Bill Gates氏は、家庭用遺伝子検査キットの普及が悪名高い連続殺人犯「ゴールデンステートキラー」の逮捕につながったと指摘しただけでなく、毎年何百万人もの命を救う可能性がある科学的発見にも言及した。
23andMeのユーザーが任意で提出した4万件以上のサンプルを調査することで、科学者は、セレンと呼ばれるミネラルの処理を制御する遺伝子と早期陣痛の間につながりがあることを特定した。この研究では、その遺伝子を持っている妊婦は早産する可能性が高いことが発見された。
「研究者たちは今年の後半まで、セレンが早産のリスクにどの程度影響するのか正確に知りませんでした」とBill Gates氏は述べ、 毎年1500万人の赤ちゃんが未熟児として生まれていると指摘した。「しかし、関連がある程度証明されれば、いつの日かセレンが、女性が妊娠を満期まで延ばすための安くて簡単な解決策となるかもしれません」(同氏)
性差別的なデータ
Gates夫妻は、成人女性と女児の健康と発育に関するデータが不足していることを嘆く。夫妻によると、「女性の問題」を排除する人為的な分断が改善と進歩を妨げているという。現在実際に存在し、政策決定者たちが利用するデータの質が低いことが問題を複雑化しているとMelinda Gates氏は説明した。「それは性差別主義者的だとさえ言えるかもしれません」。同氏は、女性を労働者ではなく妻や母として捉えているデータについて指摘している。これは、多くの国で男性だけが収入を得ているとみなされているためだ。
「データは客観的なものだと考えたいのですが、尋ねる質問によって返答が形作られることがよくあり、質問が偏るとデータにも偏りが出ます」(同氏)
Gates夫妻は、世界で最も貧しい女性たちに携帯電話を与えれば、大きな違いを生み出せると指摘した。コネクティビティが「疎外の解決策」となると同氏は述べ、世界で最も疎外されている女性たちにとって、携帯電話は全く新しい人生を築く手助けとなるとした。
「女性は携帯電話を使ってサービスや機会へのアクセスができるだけではありません。携帯電話を使用することが社会規範を変え、ジェンダーの不平等が続く原因となっている権力構造へ挑戦することにもなっているのです」(同氏)
時代遅れの教科書
学生が教材をどのくらい理解しているかを分析できない紙だけの教科書は、ソフトウェアの進歩のおかげで「過去のもの」になりつつある、とBill Gates氏は述べる。同氏は、学生がオンラインでテキストを読み、概念を説明する動画を視聴して、授業を補強するためにゲームをする代数の授業の計画を説明した。その後、テストを実施して、学生が何を苦手としているのかを明らかにするという。
「これはすべて、教師がすることを補完するものであり、代替物ではありません。 先生はあなたが読んだものや見たもの、どのような問題が正解や不正解だったか、そしてよりサポートを必要とする分野を示す十分な報告を得ます」(同氏)
同氏は、こうしたツールが幼稚園から高校まで何千もの米国の教室で採用されたことを明らかにした。3000校以上が、同氏が資金提供した「Big History」という無料のデジタルコースを採用し、作文の宿題のフィードバックをすぐに生徒に返しているという。
トイレ
Gates夫妻はこの8年間、トイレを再設計することで、毎日800人の命を救える可能性があると主張している。トイレの再発明を探求する取り組みの最新情報として、Bill Gates氏は、同財団が2018年に北京で開催したトイレ見本市で、いくつかの次世代トイレを視察したと述べた。それらの企業の多くは市場に出る準備ができており、病原体を殺し、下水道インフラが不要で、拡張可能な発明品を提供する。
「これら未来のトイレは世界で一番きらびやかなイノベーションではないかもしれませんが、何百万もの未来の命を救うでしょう」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。