その上で効果的な導入手法として田畑氏は、「対応業務を探す。組織横断型アプローチやCoE(センターオブエクセレンス)の部署名を親しみやすいものにする。あわせてダッシュボードを作成し、どの事業部(の自動化)が進んでいるのか。社長賞など競争形式を用いるのも効果的」と語った。
大きく育てるには“スケーラビリティを実現する継続性”
次にモデレーターの百瀬氏が「スケーラビリティ。RPA小さく初めて大きく育てられるのか?」と問うと、KPMGの福島氏が「スケーラビリティを日本語に訳すと拡張性だが、垂直と水平がある。垂直はRPA。ロボット数を増やすにはライセンスを追加購入すればよい。今、企業は人材不足のため、事務センターの設立件数も数件程度。問題は業務量が増加しなくなった場合、人は簡単に解雇できない」という状況を明かした。
「水平は品質。業務の自動化においてBPRパターンならばヒアリングやアンケートを実施するのが通常だが、今はRPAの前にプロセスマイニングを実施すれば、業務内容の全量をテーブルに載せられる。あとは1番効果がある業務を自動化すればよい。これまではコンサルへの高額費用を支払う必要があったが、今はより容易に導入できる」(KPMG福島氏)
次いでDTCの中村氏は「実際に成功している企業は5%程度。大きく育てられない理由は、スケーラビリティを実現する継続性が欠けている。必要なのは最終的に実現できたと断言できるか、取り決めや目標値、もしくはコミットメントの設定が重要。他社の事例でもロードマップで進捗を可視化することで、いつまでに何を実現するのか明確にするケースは少なくない」と述べた。
「ロボットはデリケート」
モデレーターの百瀬氏が「RPAのエンドユーザーとどう向き合うか」と問うとDTCの中村氏は、「エンドユーザーとのせめぎ合いはどのプロジェクトでも発生する。デモンストレーションを見せたタイミングでは“ぜひ”というお声をいただくが、実現段階から抵抗感が強くなるケースが多い」と説明した。
「ここには“自分の仕事を失うという不安”と“RPAが想像以上に不安定”と2つのポイントがある。これらを払拭するには、エンドユーザーに対しての期待値を制御することを心掛けるべし。RPAとは導入したらおしまい、ではなく継続的保守が大変なのが前提だ。これまでの基幹システムと同様に考えると導入・運用が難しくなる、エンドユーザーからも(ロボットが)100%仕事をこなしてくれるという期待があるため、ここを明確した上で導入すれば協力的になると思う」と導入時にイメージを制御するテクニックを披露した。
PwCの中村氏は「エンドユーザーと向き合うには、RPAの開発・運用をユーザー開発型なのか集中開発型にするかで異なる。RPAは開発スキルがないと安定性が乏しく、後者の方が受け入れられやすい。ロボットに変な入力チェックや計算式導入、ファイル名変更などチェックルーチンを増やすと保守負担も高まり、実行時につまずきやすくなる」と解説した。
「ロボットはデリケート。ちょっとしたことで風邪を引く存在だと認識してもらわなければならない。実際のロボットは人間が行ってきた作業を地道に代替してくれるけなげな存在。ここを分かってもらえば(エンドユーザーも)愛着が湧くので、ルール通りに使うことを啓もうしている」(PwC中村氏)
「RPA案件でOCRが関わらないケースは皆無」
次にモデレーターの百瀬氏が「RPA+OCR、紙とデジタルの親和性はいかに?」と質問すると、アクセンチュアの田畑氏は「RPA案件でOCRが関わらないケースは皆無。多くの業務は文字を読むという認知能力をAI(人工知能)でカバーするのが重要なテーマ」という見方を明かした。
「ボリュームとして大きいのはOCRだ。手書きの作業報告書や紙の請求書、ファクスの発注書が対象となる。注意すべきはOCRという単体ソリューションとして考えるのではなく、RPAツールとセットで考えるべきだ。文字の認識率が課題になるOCRだが、英数字の識字率は高い。そこにRPAと組み合わせて基幹システムに照会し、情報を取得すればスムーズに処理が進む」(田畑氏)