IBMは米国時間2月12~15日まで、米国サンフランシスコで年次カンファレンス「IBM Think 2019」を開催している。12日には会長兼社長で最高経営責任者(CEO)を務めるGinni Rometty氏が基調講演に登壇し、「デジタル改革の第2章」としてマルチクラウドや人工知能(AI)を中心に語った。買収計画が発表されているRed Hatの社長兼CEOのJim Whitehurst氏もゲスト登壇し、両社で進めるオープン戦略について触れた。
IBMの会長兼社長でCEOを務めるGinni Rometty氏
デジタル革命第2章でクラウド、データ、AIはどう進化する?
Rometty氏は現在の状況を「デジタル改革(デジタルリインベンション)の第1章が終わり、第2章に入るところ」と見る。第1章がパブリッククラウドや顧客向けアプリが主導していたのに対して、第2章をけん引するのはエンタープライズだという。「第2章はデジタルとAIを全ての企業が活用し、ミッションクリティカルアプリケーションのクラウドへの流れが加速する」(同氏)
第2章での重要な要素として、Rometty氏は次の5つを挙げる。
- 外から内への流れ
- 内から外への流れ
- 上記2つの流れを結び付けるビジネスプラットフォーム
- 公正さなどの要素を持つAIプラットフォーム
- 適切な情報アーキテクチャ
(1)と(2)はデジタル変革に対するアプローチで、(1)は新しいサービス、新しい顧客体験など、第1章の段階で主に構築されてきたものであるのに対し、(2)は企業が持つワークフローやデータが変化をけん引する。具体的にはコアアプリケーションのモダン化であり、柔軟性のあるアーキテクチャが必要だという。
(3)と(4)はプラットフォームで、(3)はAIを組み込んだものであり、(4)はアプリケーション開発のライフサイクルでプラットフォームが必要だったのと同じように、AIのライフサイクル追跡のためのプラットフォームが必要という。
(5)はデータ側の問題に対応するものだ。AIプロジェクトを進めるに当たって「80%の時間をデータの準備に費やしている」とRometty氏。この問題に対応すべく、会期中「Watson Anywhere」「IBM Business Automation Intelligence with Watson」などを発表したことに触れた。特に、オンプレミス、任意のパブリッククラウドなどでWatsonを動かすことができるWatson Anywhereについては、「ある場所でモデルのトレーニングをして、別のところで動かすなどのことができる。Watsonは最もオープンで拡張性のある、企業向けのAIになった」と説明した。
Rometty氏によると、IBMはAI関連で2万件ほどの取り組みがあるという。さまざまなユースケースで利用されているが、最も多いのがカスタマーサービスとのことだ。研究の方向性については、「コア」「信頼性」「拡張性」の3つがあるという。
コアは、少ないデータで学習ができるか、学習と推論(ここでは会期中、「Project Debater」として人間のディベートチャンピオンと議論を行うライブデモを披露している)などの研究を継続して進めることだ。信頼はバイアスや倫理などの潜在的問題に対するもので、公正さや説明性の強化となる。
拡張性はAIの自動化で、データに適したアルゴリズムをマシンが人間に代わって選ぶなど効率化に向けた取り組み。IBMは既に、Watsonを容易に使うことができるツールと環境となる「Watson Studio」を提供している。