人材紹介会社Harvey Nashとコンサルティング企業KPMGが発表した調査レポートによれば、世界の最高情報責任者(CIO)の3分の2近く(65%)は、人材不足がデジタル変革戦略推進の妨げになっていると考えている。また、高度なスキルを持ったITプロフェッショナルに対する需要は高まる一方だという。では、デジタル変革を推し進めるためのスキルを持った人材を見つけるにはどうすればいいのだろうか。この記事では、3人のITリーダーに、スキルギャップを埋めるために行っている工夫について聞いた。
1.イノベーションに関われる環境を提供する
Mercedes-AMG Petronas MotorsportのIT部門担当幹部であるMatt Harris氏が、人材の獲得に苦労するはずなどないと多くの人は思っているだろう。普通なら、F1の強豪チームでIT部門を率いる同氏の下には、変化の激しいモータースポーツの世界で自分の力を試そうとする、才能あるITプロフェッショナルが殺到していると思うはずだ。
しかし、実際には必ずしもそうではない。Harris氏が「きっと見れば驚くだろうが、うちの会社はかなり辺ぴな場所にある」と説明する通り、同社の本社は英国中部に位置するノーサンプトンシャー州のブラックリーにある。Harris氏によれば、一部の分野の技術者はMercedes-AMGのような企業で働くチャンスに魅力を感じるが、ITプロフェッショナルにとっては魅力は少ないという。
「エアロダイナミクスや、設計、エンジニアリングが専門であれば、F1チームのために働くことは仕事人生の頂点だと感じられるかもしれない。F1は、技術的にもっとも進んだ分野の1つだからだ。しかしITについては事情が違う。ITはITであって、F1チームでも金融企業でもやることは同じだ」と同氏は言う。
Harris氏はこの課題に正面から取り組んでいる。同氏は、Mercedes-AMGでの仕事を「面白い」ものにする方法を考えている。そのプロセスは、仕事の中から退屈で日常的な作業を取り除けるかどうかにかかっている。Harris氏はITの業務をシンプルにし、スタッフがイノベーションに時間を割けるようにすることができるパートナー企業を探している。
「チームの業務とパフォーマンスを改善するシステムを導入できれば、ITプロフェッショナルがより革新的な分野に取り組めるようになり、チームに残ることに一層関心を持ってもらえるだろう。チームのために遠くまで来てくれる可能性も高くなるはずだ。また、誰もが新しいアイデアを思いつきやすくなり、それが優れていれば、実際に実現することになる」(Harris氏)