携帯電話会社が世界中の地域に大急ぎで5Gを展開するにつれて、そのメリットに対する関心は高まり、売り込みは加速していく。5Gがすでに普及しているスマートフォンで利用されるのは明らかだが、プロフェッショナルはそれ以外にもさまざまな形で5Gを活用していく可能性が高い。その際には、ウェアラブル技術や自動運転車などの5Gによって可能になる新たな様式の技術よりも、既に導入されているデバイスのアップグレードが先行すると考えられる。
この記事では、5Gがスマートフォン以外に使われる5つの用途を紹介する。
1.近接マーケティング
近接マーケティングはまだ生まれたばかりの分野で、マーケティングの専門家が、この技術の活用法を模索している段階にある。2018年12月には、Burger Kingが古くからの競合企業であるMcDonald'sを標的としたキャンペーンを展開し、同社の看板メニューである「ワッパー」を1セントで販売した。ただしその値段で買うには、McDonald'sの店舗から600フィート(約183m)以内で、Burger Kingのアプリからワッパーを注文する必要があった。このキャンペーンには多少のリスクがあったが、マーケティング業界では評判になった。
一方、日本の無印良品が展開しているポイントサービスでは、ジオフェンシング技術を使い、同社の店舗に行くだけで商品を購入しなくても1ポイントが付与される仕組みを設けているが、このサービスでは多少の問題が発生した。ある金銭目的のハッカーが、数百のアカウントと45台のパソコンを使用し、GPSデータを偽装して日本、欧州、米国の多数の店舗に562万回来店したように装い、ポイントを獲得したのだ。このハッカーは、GPSデータを偽装する同じテクニックを使って、イオン九州からも4万9100ドル(約540万円)相当のポイントをだまし取り、同じ月に2度逮捕されている。
5Gはマイクロセルを利用しているため、GPSデータに偽装がないかを検証する二次的な手段を提供できる。これを利用すれば、近接ターゲティングの信頼性を上げ、キャンペーンを悪用しにくくすることができると考えられる。これは5Gの信号が利用できさえすれば技術的に実現できるため、5Gのメリットを活用する最初の事例の1つになるだろう。
2.混雑した空間でのWi-Fiとの連携
ミリ波周波数帯を使用しており、小型の基地局を多数配置する必要がある5Gのモバイルネットワークは、比較的狭い空間で多くのデバイスを接続しなければならないような場面に強い。多数の人が参加するカンファレンスの会場で、各参加者がスマートフォンを持ち込み、他のデバイスをテザリングするような場面では、ネットワークも輻輳しがちだが、5Gはそんな場面にも対応できるように設計されている。同じことは、スタジアムや大規模なオフィスビルなどの、トラフィック量が大きく変化するような他の状況にも当てはまる。
さらに、QualcommのSanjeev Athalye氏は、CES 2019でのTechRepublicの取材に対して、5GとWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)は共存できるように設計されており、「Wi-Fi 6とその隣接規格によって、Wi-Fiのセキュリティが改善されるため、今ほどは不正なアクセスポイントのことを心配しなくてもよくなる」と述べている。Athalye氏はまた、5Gでは携帯事業者のコストが下がり、いわゆる「無制限データプラン」が可能になることから、「一般消費者が、自分が今携帯の電波で通信しているのか、Wi-Fiで通信しているのかを考える必要がなくなり、携帯電話のデータ通信量を消費していないかと心配せずに済むようになる」と述べている。