EY Japanは2月21日、「EYグローバル情報セキュリティサーベイ(GISS)2018-19」の調査結果を発表した。企業のセキュリティ対策は改善傾向にあるものの、依然として人材や予算の不足という課題を抱えていると指摘する。
全体概要についてEY Japan Cybersecurity EY 新日本有限責任監査法人 Forensics事業部 プリンシパルの杉山一郎氏は、「サイバーセキュリティ強化のためにより多くのリソースを費やし、“セキュリティ・バイ・デザイン”として情報システムの企画・設計段階からセキュリティに取り組み始める良い傾向が出ている」と解説した。一方で、「望む水準のセキュリティ関連予算が確保できていない」あるいは「セキュリティのスキルのある人材が確保できない」といった課題も依然残っているというのが現状だと認識を示した。
EY Japan Cybersecurity EY 新日本有限責任監査法人 Forensics事業部 プリンシパルの杉山一郎氏
また同氏は、「基本に立ち返り、“組織の保護”“サイバーセキュリティの最適化”“成長の実現”という3つの点に注力する必要がある」と語っている。
EY Japan Cybersecurity EY アドバイザリー・アンド・コンサルティング シニアマネージャーの森島直人氏は、毎年開催するセミナーの冒頭で来場者に「セキュリティはコストか、投資か」を尋ねたところ、「前回は9割がコストと答えたが、1年後には9割が投資と答え、完全に逆転した」というエピソードを紹介、企業やIT担当者の意識が急速に変化しているとした。しかし、この変化の要因はまだ分からないという。
また、同氏は調査結果から日本での特徴的な部分を幾つか紹介した。例えば、「セキュリティ予算の増額要望」(日本、現状比)では、2017年の調査では50%超が「0%」と回答、現状の予算で不足はないと答えたのに対し、2018年は「0%」は10%少々まで減少、替わって「50%」が30%以上、「100%」が30%弱となった。この結果について同氏は、「予算が減額されたということではなく、セキュリティに関してまだまだやるべきこと/やりたいことがたくさんある、という認識が広まった結果だと見ている」とした。
セキュリティ予算に関する結果(出典:EY Japan)
グローバルとの比較で日本に顕著な傾向が見られる例としては、人材不足が挙げられた。「IT部門におけるサイバーセキュリティ専任者の割合」(2018年)では、「2%未満」という回答がグローバルで40%弱なのに対して日本は60%超と突出している。2%という数字は、IT部門に50人在籍していた場合、そのうちサイバーセキュリティ専任者が1人という比率であることから、同氏はこの回答は実質的に、「サイバーセキュリティ専任者が存在しない」ことを意味するとの解釈を示した。「セキュリティに関するスキルが高いか低いかという問題以前に、そもそも専任で担当する人が全く確保できていないという段階だ」と指摘する。
セキュリティ人材に関する結果(出典:EY Japan)
最後にEY Japan Cybersecurity EY アドバイザリー・アンド・コンサルティング パートナーの松下直氏は、「『防御のその先へ』というテーマで今回の調査結果を発表したが、『防御のその先』とはレジリエンス(Resilience)、つまり、いかに早くインシデントを検知して対応、復旧させていくかということだ」と指摘した。さらにセキュリティはコストか投資かという問題に関しても、「クラウド、モバイル、そしてデジタルと言うように、企業のITインフラが大きく変わりつつある。その中で、『新しいビジネスにシフトするんだから、そこに最初からセキュリティを組み込んでおこう』ということで投資という考え方になっているのでは」と語った。
同調査は21回目で、日本を含む全世界59カ国の企業や組織のCxO、情報セキュリティおよびITのエグゼクティブ/マネージャーの約1400人を対象に実施している。