人間の負担削減でOCRも活用--三井住友フィナンシャルのRPA活用の独自性 - (page 2)

阿久津良和

2019-02-27 07:00

 送付元は他行のためシステム連携も難しく、送金依頼書も帳票が異なり、時間内に処理完了を求める“カットオフタイム(あらかじめ定めた最終的な締め切り時間。海外送金の場合は送金指図の受け付け締め切り時間)”という課題も残っていた。

 現在同社は、OCR+RPAで送金依頼書を読み取り、人間が確認した上で送金登録を自動化。識字精度と保守性も担保させつつ、大幅な作業時間の短縮を実現できたが、完全実用に至っていないという。人による補正入力負担を軽減させる手法が曖昧であり、基幹システムとの連携や識字率の維持も課題だという。

 これらの課題に対してSMFGは、RPAが通貨コードや過去履歴などのデータと自動投合を実施することで補正負担の軽減に成功。基幹システム連携は、RPAを使うことで外為システムを改修せずにデータ連携を可能にした。そして識字率の性能維持だが、現在は人が見て正しいと判断できるデータを自動的に辞書登録し、間違えやすい国名や銀行名などを学習させている。

 「OCRは多くのものを検討したが、100%という製品はない。一方で銀行業務は100%の担保を求められ、必ず人の補正が発生する。この人の負担を減らすのが重要だ。(導入後は)現場から『楽になった』といってもらえたが、不安や不満も同時に上がってきた。フィードバックを踏まえてチューニングを重ねつつ、業務利用を目指す」(山田氏)

月間数万枚のファクスをAI画像認識で仕分け

 一方でSMBCグループの一翼を担うSMFLは、2017年当時から200前後のロボットが常時稼働し、社内には“RPAアンバサダー”制度を設けるなど積極的な取り組みを重ねてきた。フロントラインからバックエンドまで、業務を理解する現場の人間をRPA導入リーダーとして任命し、導入推進を進めている。

 SMFL システム企画部デジタル企画開発室 チームリーダー 京谷和樹氏によると、現在はUiPathオフィシャルトレーニングパートナーとして、「外部100社前後の企業にトレーニングを実施している」という。

 同社は社名からも分かるようにリース業務を手掛けているが、「顧客に素早く対応するのが競争力の1つとなる」(京谷氏)との仮説を立て、ウェブやスマートフォンといったマルチチャネル化やリース申請時の審査モデルに統計モデルを採用することで、数分程度で可否を返信可能にした。

 だが、課題として残ったのが、顧客から受信する月間数万枚のファクスである。「多様なチャネルを用意しても、ビジネスの商習慣を変えるのは難しい。そこでアプローチを変え、顧客に行動の変容を求めるのではなく、弊社側でファクスによる申し込み応答速度を改善する」(京谷氏)ために取り組み始めたのがRPAの出発点だという。

 具体的には2014年ごろから取り組んでいた人工知能(AI)画像認識技術を用いた仕分けモデルを開発し、帳票受領や仕分けを100%自動化。「驚いたというのが正直な感想。申し込みサイクルを75%も削減できた」(京谷氏)という。電話番号やハンコの漏れといった項目確認も、「不備基準のデータを集めてAIで学習すれば検知可能。たとえば商談中にスマートフォンで撮影すれば、不備を検知する」(京谷氏)

 最もハードルが高かったと語るのは「データ入力」。OCRエンジンを独自開発した同社だが、現時点で目標に達していない。

 そこで選択したのが、顧客情報をすべてではなく、電話番号だけを読み取る手法。数字単独であれば、識字率も一定レベルを担保できるため、あらかじめ用意した日本の登記済み法人データを照合することで、顧客を特定するというもの。現在は9割を超える顧客の名寄せ率を達成しているという。

 聴講者へのメッセージとして、SMFGの山田氏は「いまだ残る紙帳票をOCR活用で自動化し、その領域を拡大したい。SMBCグループとして多様なチャレンジを行うための主体的なサポートをUiPathに期待すると同時に、われわれが蓄積した知見を広く世の中に提供するための橋渡し役もお願いしたい」と発言した。

 SMFLの京谷氏は「RPAはルールが単純で、インプットが明確なものは自動化が進んでいる。だが、入力データに揺れがある。この点を“ラストワンマイル”として攻略したい。今後はUiPath内で課題を解決できるツールの集合体を目指してほしい。われわれもRPA+AIの知見は自社にとどめず、トレーニングを通じて社外展開を考えている」と、トレーニングを通じた知見共有を約束した。

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