テクノロジへの期待と裏切りが織りなす2019年のIT業界--コンプティアの予測

大場みのり (編集部)

2019-02-27 09:52

 IT関連資格や認定を手掛ける非営利団体のCompTIAは、2019年のIT業界予測を発表した。この予測でCompTIAは、「The Next Big Thing is dead. Long live the Next Big Thing(ネクストビッグシング の企業が衰退しても、革新そのものは続いていく)」と提言している。

 この言葉についてCompTIAは、「これほどまでに技術革新の期待や興味、魅力を言い表す言葉はなかなか無い」と解説する。これは今まで、初めてスマートフォンが発売された時のように、ある市場対応製品がハイテク業界を一新する時に用いられてきた。

 しかしながら、予測では「そういった現象は次第に見られなくなってきている」と指摘する。“ある重大な物事”というよりも、人々やプロセスによる支援を受けながらシステムが進化することで世界を定義しているからだ。

 CompTIAによると、この変化はインフラの積み重ねや人工知能(AI)など新進で汎用性の高いテクノロジを備えた部品の実現を伴うかもしれないという。そして、それらはデータや“サービスとしての”顧客体験、ビジネスプロセスの最適化によって完成するとのことだ。

 CompTIAは、「こうした状況を背景に、我々は情報技術業界やその労働力、将来のビジネスモデルを形作るものを模索していくつもりだ」と語っている。

 CompTIAは、2019年のITトレンドとして14の予測を示す。その中で注目されるトピックの概要は次の通りとなる。

慢性的な技術者不足がもたらす新しい考え方

 IT業界の売り手市場とハイテクスキルのギャップという課題は続いている。この問題は、テクノロジ業界だけでなく、ほぼ全ての業界に影響を及ぼしている。米国のIT業界における失業率は、全国の失業率のほぼ半分である約2.1%だ。特に新興技術の訓練、データ分析、アプリケーション開発といった分野では、人材を見つけて維持することは困難である。しかし同時に、このハイテク労働者不足は新たな考え方をもたらした。例えば、Apple、Google、IBMといった大手企業は、多くのポジションにおいて4年制大学の学位を要求しなくなった。この規制緩和は、何千人もの採用を可能にするだろう。実際、技術のキャリアで求められるスキルの多くは、自己学習やコミュニティカレッジへの入学、実地訓練などで獲得できる。

職場における人間とロボットの共存

 「ロボットが人間の仕事を奪う」といった警鐘が鳴らされているが、実際にはそうとも言い切れない。機械は人間の仕事内容を代替してきた一方で、電子メールなどにおいては人間がテクノロジを使ってきたからだ。 そして、これらの極端な例の間に “人間がテクノロジを活用して行動する”というハイブリッドモデルがある。インテリジェントテクノロジは今や、データ分析から導き出した予測に基づいて動いている。このことから、インテリジェントテクノロジは人間と同様に能動的なアクションを起こし、その一方で予想通りに動くとは限らないといえるだろう。そして、これらのデジタルと人間の協業には、多くの実例がある。産業現場では、“コボット”と呼ばれる協働ロボットが人間とともに働いているのだ。

テクノロジ専門家が持つべき知識の多様化

 世界経済から日々の生活まで、テクノロジは世界を変えている。しかし、テクノロジ分野で働く人々にとって、これは単なる朗報ではない。セキュリティやプライバシーの問題やAIへの偏見、成熟期を迎えているとはまだ言い難い技術といったマイナスの影響もこの一年で明らかになっている。テクノロジ業界への否定的なイメージは、政府による規制強化や顧客の信頼低下など、さまざまなシナリオにつながる。イメージの低下を防ぐためには、潜在的なミスに気を配りながら持続的な成長を可能にする行動を取ることが必要だ。ハードウェアを選択する際は、生産性とコストだけでなく環境への影響も考慮すべきである。データ管理においては、ストレージや分析だけでなく、プライバシーや透明性も重要だ。これらは今までCIOの関心事であったが、これからのテクノロジの専門家は、技術的な能力だけでなく、部門を超えたコラボレーションや戦略的なビジネス思考にまで自身の知識を広げていく必要がある。より広範囲なスキルがあれば、彼らは意図せぬ結果について話し合うときもイニシアチブを握ることができるはずだ。

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