松岡功の「今週の明言」

米シスコ幹部が説く「デジタル変革の4つの課題」

松岡功

2019-03-01 10:14

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、米Cisco SystemsのMichael Koons シニアバイスプレジデントと、レノボ・ジャパンのDavid Bennett 代表取締役社長の発言を紹介する。

「デジタル変革の課題はスキル、コスパ、セキュリティ、技術戦略にある」
(米Cisco Systems Michael Koons シニアバイスプレジデント)

米Cisco SystemsのMichael Koons シニアバイスプレジデント
米Cisco SystemsのMichael Koons シニアバイスプレジデント

 シスコシステムズが先頃、都内ホテルで開催した自社イベント「Cisco Digital Innovation Summit 2019」において、米Cisco Systems ワールドワイドセールス部門 グローバルシステムエンジニアリング担当のMichael Koons(マイケル・クーンズ)シニアバイスプレジデントが基調講演を行い、その後の記者会見にも臨んだ。同氏の冒頭の発言は、その会見でデジタル変革の課題を4つ挙げたものである。

 Koons氏は基調講演で、Ciscoの事業戦略におけるイノベーションとして、図に示すように「マルチクラウドな世界の実現」「新しい時代のネットワーク」「データの力を解放」「基盤としてのセキュリティ」「価値あるエクスペリエンスの創造」といった5つを挙げた。

図:Ciscoの事業戦略におけるイノベーション
図:Ciscoの事業戦略におけるイノベーション

 マルチクラウドな世界の実現については、クラウド形態としてパブリック型やプライベート型、そしてハイブリッド型を含めてそれらを複数連携させたマルチクラウドがある中、Ciscoはそれら全てに対応した技術や製品・サービスを用意し、クラウド全体で一貫した可視性やセキュリティ、制御性を持つプラットフォームを提供していくことを強調した。

 また、新しい時代のネットワークについては、企業が必要とするデジタルスケールを提供できるネットワークを管理するには、人材が不足していると指摘。とりわけ、これからはIoTに向けたネットワークの刷新が求められると説明した。その上で同社として現在注力しているインテントベースネットワーキングの展開に努めていくとした。

 Koons氏の基調講演で筆者が最も印象的だったのは、「コスト削減とデジタル変革は同時に進めていくことが肝要」とのメッセージだ。これは言い換えれば、ITにおける守りと攻めを同時に進めていくことを意味していると受け取れる。

 最後に、記者会見でのデジタル変革の課題を挙げた冒頭の発言だが、「スキル」はデジタル変革を進めていくためのスキルが必要とのこと。「コスパ」は限られたコストでデジタル変革を実現するパフォーマンスが求められることを説いている。

 また、「セキュリティ」はまさしくサイバーセキュリティへの対応、そして「技術戦略」はさまざまな技術をどのように適用していくか、である。その上で、「あらゆる取り組みによってビジネスの目標をどう達成していくか、が最も重要なことを肝に銘じておくべきだ」と強調した。成すべきことは、デジタル変革ではなく、ビジネス目標の達成だと。当たり前のことだが、講演の締めで繰り返して語っていたのが印象的だった。

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