「ひとり情シス」の本当のところ

第16回:ひとり情シス覆面座談会(パート2)--社内のITリテラシーをどうやって高めるか

清水博 (デル) 2019年03月14日 07時00分

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 「ひとり情シス覆面座談会」を取り上げた前回記事は、もうずいぶん前のことになりますが、たびたびカテゴリランキングの上位に浮上します。普段はなかなか聞けないリアルな内容であるだけに、皆さんの興味関心も高いのではないかと考えています。

 今回は、ひとり情シスから見て、常日頃から考えている変革のポイントについて、赤裸々に語っていただきました。

座談会に参加したひとり情シスのプロフィール
  • スーパーネオ主任:ITリテラシーが極めて高く、社長に進言できる近い存在で、全社の経営戦略にも意見を求められる参謀格。スーパー(超越)でネオ(新しい)なひとり情シス
  • 旧情シス係長:段階的に情報システム部門の規模が縮小して、最終的に現在の人員の一人になった。元々は、COBOLのプログラマー
  • 初めて情シス君:ひとり情シスで運営していた担当者の定年退職を受けて、後任者となった。2年間にわたる引き継ぎ期間の最中
  • スタック先輩:約20年にわたって派遣型常駐エンジニアを続け、その後、中堅企業の情報システム部門のひとり情シスに転身。フルスタックエンジニアとして現場の第一線で働き続けることが信条

 そして、司会の私(清水)と、一緒に戦略立案をしている同僚の木村佳博がアドバイザーで参加しました。

ひとり情シスの覆面座談会。左はじは清水博と右はじは木村佳博
ひとり情シスの覆面座談会。左はじは清水博と右はじは木村佳博

ひとり情シスとして改善、改良していきたいこと

木村:今後、ひとり情シスとして改善、改良していきたいことは何でしょうか?

スタック先輩:社員のITリテラシーを向上させたいです。ファイルを共有する概念やイントラネットに情報を公開するとチーム全体が便利になるなど、自律的に行動するような風土作りが重要だと思っています。

 そのためには、ITの基本を積極的に理解してもらいたいと考えています。社内のリテラシーの高さによって、プロジェクトの成否やITの活用度合いが左右されると考えています。社内SNSなどへ気軽に参加してもらい、ナレッジをためられるようになれば、新入社員でもある程度の情報を検索できるようになります。これができれば、競争力のある会社になるのではないかと思っています。

木村:ツールの選定というよりは、そうした空気感を率先させて作っていくような、風土改革が重要ということですね。

スーパーネオ主任:チャットツールを使ってもらえれば、ちょっとしたメッセージのやりとりで済むのですが、どうしても対面で打ち合わせをしたいと言われることが多いです。そうしなければ失礼だと思ってくれているようですが、ツールも変化しているので柔軟に対応してほしいです。

 ミーティングが増えてしまうと、IT業務の作業時間が減ってしまうことになり、ひとり情シスの状況では致命的になります。

清水:あるひとり情報シスの方の話なのですが、何でも問い合わせれば対応してくれるのが情報システム部門の仕事だと思われているケースがあるらしいのです。そういう会社では、問い合わせをすれば仕事ができて喜ぶのではないかと考えられていたそうです。膨大な量の問い合わせに一人で苦労しているなどとは、全く想像もついていなかったようです。

 あまりにも同様の質問が繰り返されるため、「ユーザー部門でも覚えてほしい」とはっきり言ったところ、最初は意外であっけにとられたような顔をされたようですが、問い合わせに何でも答えてくれる部門という誤認識が改まり、ユーザー部門が自分たちで備忘録を作成したり、新しいことに進んで習熟したりするようになったということです。

 情報システム部門やひとり情シス担当者が何をどこまで対応するのか、ユーザー部門で対応してほしいことの線引きが正確に認識されていないケースもまだまだ多いようです。

旧情シス係長:リテラシーを上げることは確かに重要ですが、最悪の場合、システムやPCについては分からなくても構いません。ただ、情報セキュリティに対してはある程度の理解がほしいところです。ある程度の時期が来たらパスワードを変えたり、人目につくところに置かないようにしたりなど、基本的な意識と言うものが重要です。「このレベルから教えるのか?」という葛藤がいつもあります。

 また、システム開発の内製化は良い面も多いのですが、社内の負担が増えるのも事実です。開発の最終段階でユーザーテストをしなければならないのですが、現場はいつも忙しい状況です。それも理解できるのですが、内製開発をスムーズに進めるにはタイムリーに連結テストをすることが重要です。システム内製化の意義などを丁寧に説明し、さらなる協力関係を築いていきたいと考えています。

木村:そうですよね。さまざまな変革をするには、周囲の理解も必要ですよね。また近年は中堅中小企業のセキュリティ問題について多くのメディアで取り上げられ、改めて認識されるようになりました。今までは対岸の火事という状況だったと思いますが、それが昨今少し変わってきているように思います。何か実施されている対策はありますでしょうか?

初めて情シス君:実際に標的型攻撃を仕掛けられましたが、ITリテラシーが低い状況だったので、対策を講じるのに苦労しました。

清水:ITリテラシーを高める以前に、社内のガバナンスや社員の行動指針などが明確になっている企業は、セキュリティのリスクが少ないという話を聞いたことがあります。

スタック先輩:自社では、まだそこまで状況が整っていません。最近でも、実力のあるエンドユーザーがハイスペックなPCを購入したいということで大きな騒ぎになりました。そういう人に限ってあまり活用されないのではないかと心配していたのですが、全くその通りになってしまいました。

 「なぜ使われないのですか?」と聞いたところ、「使いにくいんだよね」という答えが返ってきました。一人だけハイスペックなものを使っているので周囲に操作方法を聞けず、思うように使いこなせなかったようです。本人が自由にPCを選べる方がいいと思っていたのですが、端末を統一するということは活用知識も蓄積していくということを改めて理解しました。今後はITの標準化を進め、統一した環境を構築していきたいと考えています。

木村:そうですね。情報システムはITの知識だけではなく、それをどう広めていくのか、どうやって文化を作っていくのかということも課題の一つですね。優秀な人はそのさじ加減に長けているように見えます。

初めて情シス君:私自身、まだまだ勉強していかなければならないのですが、残りの引き継ぎ期間で現状の仕事を理解するには限界があります。また、前任者の時代よりもシステムの規模が大きくなってきているので、一人では十分に対応できない状況が想定されます。

 そこで有料でもいいので、支援していただける企業やコンサルタントなどを探しているのですが、まるっと全体の提案をされるので、金額がとても高くなってしまいます。ビジネスなので仕方がない面もありますが、必要なものを必要なだけ、必要なときに購入できるようなサポート環境を希望します。

木村:各社とも以前よりはサポートメニューが増えてきています。弊社でも、メニューをさらに細かくして、お客さまが社内に蓄積すべき技術、外部から調達できる技術を分けて対応できるようにしていきたいです。

スーパーネオ主任:ITベンダーの中にはエバンジェリストがいますが、私も社内のユーザー部門に対して、「今後のITがどうなっていくのか」「どういう価値を生み出すのか」などを説明できるような存在を目指したいと考えています。

 しかしながら、ひとり情シスは一般的に、経理財務担当や管理部門の下部組織に入ることがほとんどだと思います。その場合、上司もITが分からないという状況で、まずは自分の上司に理解してもらえるような努力をしなければなりません。とても忙しい方々だと思いますが、定期的に情報を発信して対話するような習慣をつけておくと、力強く支援してくれるようになります。

清水:ひとり情シスの上司には、ITに対する理解のある方も少なくありません。しかし、基本的にはIT分野でキャリアを積んできた人ではないので、システム運用などの勘所のないことがほとんどです。投資対効果の分析や今後のIT需要予測、IT業界全体のトレンドを報告するなど、直属の上司と定期的に対話していくことが重要であるという話をとてもよく聞きます。

清水博
清水博(しみず・ひろし)
デル 上席執行役員 広域営業統括本部長
横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス、本社出向)においてセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のダイレクターを歴任する。

2015年、デルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手がけた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在、従業員100~1000人までの大企業、中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。自部門がグローバルナンバーワン部門として表彰され、アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。

産学連携活動として、近畿大学と共同のCIO養成講座を主宰する。著書に「ひとり情シス」(東洋経済新報社)。AmazonのIT・情報社会のカテゴリーでベストセラー。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。

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