「ひとり情シス」の本当のところ

第17回:退職したひとり情シスの穴を埋めるには?

清水博 (デル)

2019-03-21 07:00

社内と社外の半分ずつ

 第15回では、ひとり情シスの3割が転職すると説明しました、これはとても大きな数字です。私たちの営業活動でも、ひとり情シスの3分の1で担当変更になるため、お客さまからの問い合わせが増えています。ただ、今は引き継ぎもきちんとされているケースが多く、大きな混乱はないようです。

 その一方で、近年の人材不足はIT部門において特に切実になっており、後任人事に苦労しているケースも少なくありません。後任の52%は他部門からの社内異動であり、48%は社外からの採用になります。

社内から異動のキャリアパス

 まず、社内からの異動についてですが、これまでは情報システムの担当者になることは、まるで貧乏くじでも引いたかのように、将来に待ち受ける厳しいキャリアを憂える人が多かったのです。エンドユーザーから追いまくられるヘルプデスクの仕事がメインで、対応が後手になる職場だとそう感じることもあるでしょう。

 しかしながら、昨今の働き方改革やITインフラの強化、グローバルERPの導入など、経営に近いところの職種として役割を持つことが多くなり、ITを理解して経営幹部を目指す人々が異動を願い出る状況もあるようです。

 実際、ひとり情シス担当者として経営に近いところで仕事をし、データ分析のスキルを生かして経営分析を行ったり、エンドユーザーと接するスキルを買われて社内の風土改革のプロジェクトリーダーになったりすることが増えてきました、

 また、今までITとは全く関係のない総務部門や営業部門などから、兼務という形でIT部門の責任者になり、将来の幹部候補として育成させるキャリアパスもあるようです。

社外からのメタルひとり情シス

 社外からの採用については、ひとり情シスの経験があって、条件のそろった良い人材はなかなか転職市場に現れず、いてもすぐに決まってしまうほどの活況です。数年前からの傾向として、ITベンダーから転職する動きが相変わらず多いのです。

 その中には、20年近くもITベンダーで働いた経験を持ち、提案するシステムをあらゆる角度で考慮できるプリセールスやプロジェクトマネージャーを任されていたなど、いつかはユーザーサイドで活躍したいと考えていた方々です。

 自分のスキルセットで経営を支援し、会社に貢献できるようなダイレクトレスポンスを求めています。ITベンダーの中でも引く手あまたの状況で、長期にわたって自分のキャリアに適した企業を探しています。転職すること自体が目的ではありません。そして、何度も転職先の社長や経営幹部とディスカッションを重ねて、仕事のミッションを明確にしてから転職します。

 このタイプの方に「どのような企業を目指していたのか」と聞くと、老舗企業や伝統企業など経営基盤や意思決定がシンプルであり、ITを活用して飛躍や浮上を狙える企業に長年興味があったと話をされることが多いのです。

 従業員100~1000人規模の中堅企業には、とても歴史のある優良企業が多くあります。また転職条件として、社風や仕事の進め方が合致するかどうかを最重要ポイントとして、転職先と十分に確認しています。プリセールスやプロジェクトマネージャーで実績を上げた背景には、社内外の体制作りと密なコミュニケーションを、身を持って理解しているため、自身のキャリアについても同様に進めてきたとのことです。

 チャイニーズホロスコープ(中国占星術)には、十二支の他に、木・火・土・金・水の五つの気(五行)があります。この「金」は金属(メタル)の意味です。理想主義者で、雄弁で、前向きで、あらゆることにやる気があります。また、魅力的で、優しく、美しいものが好きです。まさにこのメタルの気高い雰囲気を持っているため、尊厳を込めて「メタルひとり情シス」と呼ばせていただいています。

 ひとり情シスの行く人来る人も、それぞれに人生のドラマがあります。「転職は本来の自分を見つけ出すもの」と言う方もいます。転職先で初志貫徹し、狙ったキャリアを実現することと思います。

清水博
清水博(しみず・ひろし)
デル 上席執行役員 広域営業統括本部長
横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス、本社出向)においてセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のダイレクターを歴任する。

2015年、デルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手がけた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在、従業員100~1000人までの大企業、中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。自部門がグローバルナンバーワン部門として表彰され、アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。

産学連携活動として、近畿大学と共同のCIO養成講座を主宰する。著書に「ひとり情シス」(東洋経済新報社)。AmazonのIT・情報社会のカテゴリーでベストセラー。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。

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