企業が注目するeスポーツ:市場機会とビジネス拡大の可能性はどこに?

佐藤聡 (EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング) 2019年03月07日 06時00分

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 今回は、成長拡大するeスポーツ市場のオポチュニティーについて「コア事業拡大、隣地展開、飛び地参入」の観点から解説をしていきます。

 多くの企業は激しくなる企業間競争をサバイバルする上で、既存顧客に対する製品・サービスのコストダウンを行いつつ、同時に成長が見込まれるエマージングマーケットへの投資、参入をしようとします。メガトレンドとしての消費行動変化、Society 5.0、産業構造シフトに組織的に対応すべく、中期経営計画のインプットにつながる有望市場アイデアの問い合わせが増え、次なる有望市場や新規サービスの探索、有望市場セグメンテーションと市場規模・成長性を分析するプロジェクトは増加傾向にあります。

 大企業の相談に対応しながら気がつくのは、複数のエマージングマーケットの特定と優先順位付けの重要性は理解しつつも、時間的制約や社内方針などを理由に、部分的な有望市場の探索・評価しか行っていないにも関わらず、それを是正しようとしないということです。

 本稿では、多くの企業がeスポーツビジネスを自社のコア事業の隣地・飛び地のオポチュニティーとして検討している背景を説明し、eスポーツに限らず有望市場探索の全体観を形成する上で「コア事業拡大、隣地展開、飛び地参入」アプローチを解説します。

フューチャーカスタマーを想像する

 有望市場を検討する上で、自社の将来の顧客が誰で、何を求めるか――要は、将来の自社提供価値について再検討する必要があります。将来の市場規模と成長性に基づき戦場(市場)を選択、スケールアップを実現するためには、既存の戦い方(過去の経験、勝利の方程式)に拘泥しないことが大切です。そのために5年後、10年後の顧客は誰で、その際、彼らのニーズやペインは何で、自社の製品・サービスの本質や提供価値は何か、ミドルからトップマネジメント間に「想像力」を醸成することが大事です。既に「ビジョン」や「ロードマップ」があればベストですが、クイックに社内ワークショップを開催し、ドラフトアイデアを作成することをお勧めします。

 それでは、eスポーツビジネスに投資している企業の多くは、将来の顧客をどう見ているでしょうか。2018年におけるeスポーツ・オーディエンス人口は、約1億7000万人と考えられ、アジア太平洋地域のシェアが高く、国単位でいえば中国と米国が鑑賞者数の拡大をけん引しています。eスポーツ(競技)のオーディエンス(鑑賞者)は、中国と米国が大きなシェアを有しています(図1参照)。その中国と米国における、重要な消費者セグメントは「ミレニアル世代」です。

図1 eスポーツ・オーディエンス人口分布:2018(Source:EY Analysis)
図1 eスポーツ・オーディエンス人口分布:2018(Source:EY Analysis)

 図2は、米国と中国、そして日本の人口ピラミッド(年齢構成)を比較しています。年齢構成比から見た構成人口の頂点を赤枠で囲んであります。米国と中国は、25~29歳(ミレニアル世代)のセグメントが人口ピラミッドの頂点になっています。一方、超高齢化・少子化社会である日本の構成人口の頂点は、65~69歳(団塊世代)となります。

図2 日・米・中の人口ピラミッド比較:2017(Source:EY Analysis, UN data[※1] , Population Pyramid.net[※2])
図2 日・米・中の人口ピラミッド比較:2017(Source:EY Analysis, UN data[※1] , Population Pyramid.net[※2])

 多くの企業にとって「ミレニアル世代」へのブランディングや彼らの購買パターンの攻略をすることが課題になっています。彼らにリーチできるツールとして、ブランドエンゲージメントを高めるため、ミレニアル世代を引きつけている「eスポーツ」に対する投資を拡大しており、人口構成に大きな変化がない限り、この投資拡大の傾向は持続すると推測できます。

 例えば、若者(ミレニアル世代)の自動車(購入・所有)離れというのはオートモーティブ産業にとってサバイバルに関わる問題で、自動社メーカーは数年前からeスポーツ広告スポンサーシップ(契約、※3)を含め、若者とのコミュニケーションに対する投資は拡大する傾向にあります。野球(※4)、サッカー(※5)、F1(※6)といったスポーツリーグにとってもミレニアル世代を取り込むことはクリティカルで、eスポーツを活用・連携したプロモーションはさらに活発化しています。

 一方、日本でも「ミレニアル世代」は重要なセグメントですが、相対的にボリュームが小さく、市場規模という観点では魅力に欠けます。従って、国内のeスポーツ市場を伸長していく上で、若者世代に選択と集中するターゲティングではなく、スケールアップするために、例えば親子三世代(団塊の世代、団塊ジュニアを含む幅広い年代)で楽しむコンテンツ展開、その上でビジネス形成(マネタイズ)する手段、仕組みを作り上げることが重要と考えます。

※1 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

※2 https://www.populationpyramid.net/

※3 https://www.mercedes-benz.com/de/mercedes-benz/sport/grow-up-in-esports-w-mercedes-benz/

※4 https://esportsobserver.com/major-league-baseball-sights-set-esports/

※5 https://www.gamespark.jp/article/2018/10/05/84304.html

※6 https://f1esports.com/

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