NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は3月12日、「Nexcenter Lab」プログラムを開始すると発表した。ユーザー企業がNTT ComやNTT Comのパートナー企業の最新サービスや次世代技術を活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための新たな事業やサービスを開発・検証する概念実証(PoC)環境を提供し、「Nexcenter Lab」プログラムで参加企業によるオープンイノベーションの創出を支援するとしている。
NTT Comは、「ICTを活用して『ビジネスを変革、創出』するDXをお客さまとともに実現する『DX Enabler』」を標榜する。今回プログラムは、こうしたDX推進の取り組みの一環として、セキュリティが高く、高速大容量のネットワークに接続するデータセンターの一部を開放してパートナーがさまざまなITリソースを持ち寄り、オープンイノベーションを創出することを目指すという。同様の取り組みは、グローバルでは既にドイツやマレーシアで実施されており、今回はこれを日本にも拡大する形となった。
「Nexcenter Lab」の内部イメージ(出典:NTTコミュニケーションズ)
同社は、東京エリアのデータセンター2拠点で、PoC環境に加えてミーティングなどが行える専用スペースを24時間提供する。同日の記者会見では、東京第8データセンター内の設備を公開した。ミーティングスペースの隣に専用の冷却システムを備えたマシンルームも開設されており、高密度高発熱の機器を余裕を持って設置し、運用できる環境も準備されている。
また、用意された「リアドア型空調機」は、ラック背面のドアパネルが丸ごと空調機となったような外観で、内部に冷水を循環させる水冷システムとなる。サーバが排出した熱気をラック単位でその場で冷却することにより、ラック当たり最大30kWの冷却能力を実現したという。一般的な環境では発熱対策が困難なことから、機械学習/ディープラーニングなどの分野においてGPUを大量に集積した大規模な演算環境を構築/運用することは容易ではないが、今回のプログラムのマシンルームを活用すれば、こうした大規模な演算環境を実際に構築し、検証することが可能となる。
NTT Comのパートナーの1社の日本ヒューレット・パッカード(HPE)は、NTT Comの発表に併せて、Nexcenter Labに日本初となる「Memory-Driven Computing検証環境」を導入することを発表した。
Memory-Driven Computingは、同社が「The Machine」の名称で以前から取り組んでいる次世代コンピューティングアーキテクチャのコンセプトであり、現在のCPU中心のコンピューティングから大容量メモリを中心としたアーキテクチャに転換することで、大量データの効率的な処理を実現しようとする取り組みだ。同社の米国のラボで開発中のシステムと同等の24テラバイトの共有メモリを実装した「HPE Superdome Flexシステム」が導入される計画だという。今回のプログラムの施設の意義としては、こうした最先端のシステムをユーザーが存分に試せる場を用意した上で、そこから新しいイノベーションが生まれることに期待するというイメージになるだろう。
「Nexcenter Lab」を発表した関係者(左から、レッドハット 製品統括・事業戦略 担当本部長の岡下浩明氏、HPE ハイブリッドIT事業統括執行役員の五十嵐毅氏、NTT Com 代表取締役副社長の森林正彰氏、EMCジャパン 上席執行役員 NTT営業統括本部長の日下幸徳氏、NTT Com クラウドサービス部長の飯田健一郎氏)
プログラムの概要についてNTT Com 代表取締役副社長の森林正彰氏は、「パートナー企業とともにお客さまのDXを実現していくための仕掛けをここから作っていきたい」と展望を語り、同時に「パートナー各社の最先端のシステムがここに持ち込まれることで、今後のデータセンター・インフラやネットワークがどうあるべきか、我々自身も学ぶことができる」という副次的な意義も明らかにしている。