グループウェアの開発、販売、運用を事業とするソフトウェアベンダーのサイボウズ(中央区)。2018年12月期の売り上げは前期比18.9%増の113億円で過去最高を更新した(営業利益は前期比37.5%増の11億円)。有償契約は100万ユーザー、2011年から提供するPaaS「kintone」の導入社数は1万社を突破するなど、売り上げ以外の数も順調だという。2月27日に開いた事業戦略説明会では、2018年度を振り返るとともに今後の戦略を語った。
中小企業向けのグループウェア「Office」は、3年連続過去最高売り上げを記録。大企業向けのグループウェア「Garoon」、企業の“ファーストグループウェア”にぴったりと表現するメール共有サービス「メールワイズ」など、2018年度は展開するすべての製品が好調な売り上げを記録したという。
IT化は生産性の格差をもたらした
青野慶久氏
サイボウズで代表取締役社長を務める青野慶久氏は、好調の原因をツールと風土が進化する現状にあると分析しているという。これまでのOA化、IT化の歴史を「電話やファクス、ワープロなどのOA機器で手書き以上の効率化が可能になった。また、PCやメール、インターネットなどIT化で一層促進し、生産性が向上した」(青野氏)と評価する。
一方、それらはあくまで“個人”の強化にとどまっていたと説明。生産性を飛躍的に向上させるが、うまく使いこなせない人もいたと指摘し、強者がより稼ぐ構図を助長する、個人の格差を広げる一因にもなっていたと分析する。
青野氏が考える進化の過程(出典:サイボウズ)
同社が提供するグループウェアについては、情報を共有し、「チームワーク」という観点から会社や仕事をサポートするものと説明。個人を強化する時代に沿い切れなかったと感じているという。「企業でのIT活用はメールや表計算で止まってしまうことが多く、グループウェアは一部の先進的なユーザーにしか売れていない現状があった」(青野氏)。バージョンアップやキャンペーンなどの“あの手この手”を駆使しても、売上推移は減少しつつあったという。
Office売り上げ推移(出典:サイボウズ)
減少していた売り上げだが、2013年を境に右肩上がりを継続。背景には2011年から始めたIaaS「cybozu.com」などのクラウドサービス、スマートフォンなどの新しいテクノロジの登場と、効率化の追求、属人性の排除などの風潮の変化があるという。
「時間や場所を問わず情報にアクセスでき、情報の格差が減少した。育児や介護などに従事する人でも働くことが可能で、誰もが個性を生かして仕事ができる時代になってきた。それぞれが活躍できる場が増加したことで、チームとして仕事をシェアリングした上で個性を最大限に発揮する環境が必要になっている」(青野氏)と説明する。