アメリカでのロゴ(出典:kintone)
グループウェアを主軸とするサイボウズ(中央区)は2014年にPaaS「kintone」を前面に押し出した米国法人kintone Corporationを設立。2005年に米国に進出したが撤退。今回は2度目の米国進出になる。サイボウズで代表取締役社長を務める青野慶久氏は今でも「自信はない」と語る一方、2018年は導入社数が6割増、売り上げとしても5割弱が増加。2019年はさらなる加速を狙うという。
“自信がない”と語る裏側には、kintone Corporationを取り巻く競合状況がある。「世界の時価総額ランキングで見ると、トップ10のうち5社がグループウェア事業を営んでいる」(青野氏)。Google、Microsoft、Facebook、阿里巴巴(Alibaba)、騰訊(Tencent)などと競合し、無謀とも捉え兼ねられない状態と説明する。
そんな状態でも業績を上げている好調の要因は“エコシステム”になるという。他ベンダーの製品やサービスごとのそれぞれの強みを生かし、連携させて一つのシステムを作り上げるという日本のサイボウズで重視されているシステム構築モデルが、アメリカでも強みになっているという。「当初はアメリカならではの直販モデルを指向していたが、日本と同様にエコシステムの引きの強さを感じている」(青野氏)
エコシステムが日米ともにうまくいく理由の一つが、サイボウズの製品、また会社として培う風土との相性の良さがある。“グループウェア”という情報の共有に特化した製品は“多様な”製品と連携可能。使う人や会社にあわせ、寄り添うことができるシステムを構築できる。
また、サイボウズの日本での離職率は5%未満。100人100通りの働き方を認めるという“多様な”風土を実現しており、場合によってはツールに加えて企業風土の改革までもサポートできるという。
日本での「働きがいのある会社ランキング」では第2位(出典:サイボウズ)
この強みを、青野氏はビラミッドを使って説明する。「サイボウズが持つ個性を生かす組織という土台に、グループウェアに特化した事業体を貫くことで形成可能な豊かなエコシステムを提供できる。制度や風土の変革までの提供も可能で、他のベンダーにはない、ユニークで特化する部分となっている」(青野氏)
アメリカでも強みになっているという(出典:サイボウズ)
市場という観点では、強大な競合が存在するだけでなく、予測もつかない状況にあるという。「先の5社に加えて、SalesforceやBox、Dropbox、Slackなどの“カテゴリーキラー”が台頭してきている。これから参入するであろうベンチャーも加味すると、3年後や5年後の将来ですらわからない。自分たちがやることを徹底的に貫き、現場に指示される情報共有ツールをパートナーと共に目指していく」(青野氏)
2019年夏頃には、アメリカで展開するPaaS「kintone.com」の基盤を国内の自社運用基盤から切り離してAmazon Web Servicesに切り替える。青野氏は2018年11月8日の「Cybozu Days 2018」で理由の一つとして「アメリカからの開始となるが、そのあとのヨーロッパやアジアを見越すしたときに、AWSであればそのあとのスピード感が全然違う」と語っている。“自信がない”と語る裏側には、強みを生かしたグローバル展開までが視野にはある。
青野慶久氏