KOSKA(コスカ)は3月15日、製造業向けの原価管理⾃動化サービス「GenKan」をベータ版で提供開始した。同サービスは、IoT機器を用いた実績データの取得、実際原価の計算、原価分析に対応する。監修は、⽇本原価計算研究学会の常任理事で⼀橋⼤学教授の尾畑裕氏。現在は、武州⼯業、丸和電⼦化学⼯業など複数の企業で実証実験を重ねており、4⽉には利用企業が10社になると見込んでいる。
製造現場では、作業員の⽇報作成や⽣産データの⼊⼒、ストップウォッチによる測定など、製造⼯程とは直接関係ない業務によって、稼働が行き詰まることがあるという。GenKanは、加速度センサ、カメラセンサ、重量センサで各工程の作業時間を計ることで、実績データを自動で取得する。また、センサによって発生日時が記録されるため、実績データを迅速に把握することができる。同社は、データ取得の⾃動化によって原価管理業務を軽減され、取得したデータを活用することで⽣産性の向上が期待されると説明する。
生産データ画面(出典:KOSKA)
また、これまで管理会計では「当⽉収⽀は翌⽉末にならないと把握できない」「四半期の収⽀は翌四半期が始まらないと分からない」などと、収支管理に即時性が⽋けていたと指摘。これは、実際原価を把握していないことがその要因であり、結果として企業は適切なタイミングで施策を実行することができないとする。一方、GenKanはセンサから取得したデータや蓄積されている⽣産データを⽤いて、現場の⽣産量や稼働状況に応じた実際原価を⽇々更新するため、利用企業は収⽀を毎日管理できるようになる。さらに、販売価格を設定することで実際原価と比較できるようになり、⿊字や⾚字もすぐに分かるという。
実際原価掲載画面(出典:KOSKA)
加えて、現在のIoTシステムでは、機械のモニタリングやサイクルタイム、中断時間の把握しかできないため、取得したデータを使って改善に取り組もうとしても、できることはサイクルタイムや中断時間といった時間の短縮に限られている。また、⽣産管理ソフトや管理会計ソフトは、計算はできても要因分析や差異分析には弱いとする。GenKanは取得した実際原価データを差異分析や要因特定を自動で行い、分析ダッシュボードや定期レポートによって経営状況を⾦額で表示する。同社は、改善すべき点の優先順位を⾦額で⽰し、⽬標とする原価の設定も⾃動で⾏うため、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が設定できると話す。さらに、分析から導き出された改善前後の効果も⾦額で検証できるため、改善方法を再検討することも可能であるという。
原価分析レポート画面(出典:KOSKA)
「製造業界の管理会計は、財務会計と違って明確なルールがないため、各社で⾃由な取り組みが許容される。だがその反⾯、⾃分たちのやり⽅が本当に合っているのか不安に思う企業も多いと感じる。われわれは、効果のある原価計算の理論とIoTデータを利⽤した原価計算の⾃動化によって、製造業の原価管理に新たな可能性を開いていくつもりだ」(KOSKAのプレスリリース)