「G Suite」に移行したJ.フロントリテイリングのコツ--現場400人が伝道師に - (page 2)

阿久津良和

2019-03-19 06:45

 すでに同社の役員会議では、紙資料は「Googleドライブ」のPDF、メモ記述時はiPadとメモアプリケーションに移行し、ペーパレスを実現している。また、エバンジェリストについても「私自身がG Suiteの利便性を強く感じ、その思いを『主役は私』と自分事のように捉えてほしいと伝えた」(土屋氏)

 同社は現場の上長が選んだ400人のエバンジェリストがプロジェクト開始半年前からG Suiteを使用し、現場にその利便性を広めたという。上長指名という背景から熱意を持たない社員も存在したが、そのマインドセットを変えることに苦心したと土屋氏は語った。

Google Cloud 日本アジア太平洋地域 企業変革コンサルタント 山田理禾氏
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 (2)の「組織分析」は日々の業務プロセスに対する影響や社員への影響、成功指標を定義する過程だが、JFRはG Suiteを構成する各ツールを段階的に浸透させるため、フェーズ1は個人の活用促進、フェーズ2はチームの活用促進と段階を踏んでいる。

 フェーズ1は「Googleハングアウト」を用いた社内コミュニケーション、「Googleサイト」による情報の一元化、「Googleカレンダー」による会議予約。フェーズ2は「Google+」による社内SNS活用、Googleドライブによる資料共有、シフト表や企画資料の共同編集は「Googleドキュメント」を使用している。

 (3)の「コミュニケーション」について、土屋氏は「札幌のマネージャーはこのように(G Suiteを)活用しているなど社内新聞を発行し、『あの人が使っているなら自分も』という気持ちにさせる。(Google+も)利用にも制限を設けず、自由に写真をアップできるため小売業向き」と取り組みや効果を語った。

 (4)の「教育」は現場の教育需要分析を踏まえた、多様な教育プログラムを提供する。JFRは2017年7月からG Suite導入プロジェクトを実施しているが、前述の通り段階を踏んでおり、フェーズ2は2018年上期、新ハングアウトの研修やボトムアップ研修を含めたフェーズ3は2018年下期に着手している。

 さらに今後は前述の通り、マネージャーや取引先に対する負荷軽減を目的に、G Suiteを取引先のコミュニケーションツールとして利用し、朝会や通達、顧客の声を集めるアンケート、各種申請書にG Suiteを活用。1万2000人のJFR社員が皆エバンジェリストとして利用拡大を目指す。

 JFRの土屋氏は「店長や販売員など現場から(G Suiteを取引先と使いたいという)要望が強く上がっている」と説明。また、マネジメントラインに集中していた教育などの取り組みを拡大する目的で、動画を活用した専用セミナーやガイドブックを用意してフォローアップを目指す。「Prosci Best Practices in Change Management 2016」によれば、チェンジマネジメントを採用するかどうかでプロジェクトの結果に6倍もの開きが生じたという。

 記者会見の前日に世界的に「Gmail」などG Suiteに関する障害が発生。このことについて質問されると、「一般的なトラブルは情報システム部門が対応するが、(G Suiteによる)トラブルが起きても『全世界で発生中』と伝えると皆納得する。当然、業務の不具合は生じたと思うが、特に不満の声は出なかった」(土屋氏)という。

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