長野県と富士通は3月18日、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)と人工知能(AI)を活用した県庁の行政事務効率化に対する共同実証結果を発表した。作業時間の削減、品質向上へとつなげられると確認したという。
2018年5月15日、309万2000円を上限に「RPA・AI適用業務調査実証開発業務」を公募。期限の5月31日までに参加申込書の提出があった7社のうち、具体的かつ効果的な内容の提案などを理由に富士通を選定している。
対象業務は、総務部の光熱水費集計、支払業務と、給与事務、戻入通知作成業務の2つと、教育委員会の小中高校体力測定結果集計、フィードバック業務、建設部の公共工事費積算結果チェックの計4業務。2018年7月1日から2019年2月28日にかけて実証している。

2018年10月26日時点の試算(出典:長野県)
総務部と教育委員会の3つの業務には、RPA「FUJITSU Software Interdevelop Axelute」を活用。県関係庁舎の電気、ガス、水道料金などを集計、振り分け、支出請求する光熱水費集計、支払業務では、月間208分かかっていた職員の作業時間を88%削減、24分に短縮。年間で約37時間の削減を見込むとしている。
職員の給与や手当などの返納に関する通知を作成する給与事務、戻入通知作成業務では、月間401分かかっていた職員の作業時間を81%削減、77分に短縮。年間で約65時間の削減を見込むという。
長野県内小中高校の体力測定結果の集計、各学校へのフィードバック業務では、年間約171時間だった職員の作業時間を79%削減、36時間に短縮。年間135時間の削減を見込むという。

Axeluteの概要(出典:富士通)
建設部の公共工事に必要となる材料、機材、数量の算出と総額の積算、設計書作成のチェック業務には、公共工事の設計、積算業務支援ソフト「FUJITSU 公共ソリューション SuperCALS ESTIMA V6」を活用。
2018年10月、富士通のAI「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を搭載して追加した、過去の積算データと比較、誤りの可能性がある場合に通知する自動検知機能を適用したという。

積算誤り検知支援機能のイメージ(出典:富士通)
作成途中を含めた2017年度の道路改良工事設計書2105件から、誤りを含む24件の設計書を検知。品質の向上につなげられることが確認できたとしている。
検証結果を踏まえ、他業務への波及効果、業務適性が認められる業務への2019年度以降の本格導入を検討していくという。職務を単純作業から付加価値の高い作業へのシフトさせ、長野県全体での労働生産性向上につなげていくとしている。