サイバーセキュリティやデータ保護に関する賠償責任保険の分野では、加入する側の企業と引き受ける側の保険会社の両方が、リスクについて学んでいる最中だ。その過程で数万個ものIIoTセンサやその他のデバイスが増えれば、そのリスクが上積みされることになり、補償範囲を広げるためのコストも上がることになる。また、医療用のIoTデバイスがハッキングを受けて患者の診療情報が流出したり、産業用IoTデバイスが侵入されて工場の操業が停止するなどの大きな事件が起これば、保険料率は劇的に上昇するだろう。
5.システム統合
投資家は、センサやソフトウェアをはじめとするIIoTエッジデバイスに関する革新的なソリューションが開発されることを期待して、何十億ドルもの資金をIIoT分野のスタートアップに注ぎ込んでいる。これらの企業はイノベーションを起こすが、IIoT製品を既存のエンタープライズ技術と統合することが難しくなるような、独自のOSを使用することも多い。
IIoT業界にも標準化に向けた取り組みはあるが、それを前提にできるようになるのは当分先の話かもしれない。このため、IT部門がIIoTを統合する作業の負担が増している。
統合に独自のAPIの開発が必要になる場合もある。また、既存のアプリケーションやデータベースをIIoTで利用できるように、独自の修正を行う必要が出てくるかもしれない。また、大企業が取引企業にIIoTを利用させたい場合、大企業がIIoTに求める要件を小規模な取引企業が満足させられるようにするには、金銭的な支援が必要になる可能性もある。
6.コンプライアンス・監査
今後、規制当局はIIoTの分野にも踏み込み、セキュリティとコンプライアンスに関する新しい要件を定める可能性がある。
こうした規制が発達するにつれて、企業は法律専門家やコンサルタントを雇って要件を明確化し、規制に準拠するために、IT部門にハードウェアやソフトウェア、ネットワークに必要な修正を施すよう命じるようになるだろう。
外部の監査法人によるシステムの検証と、修正を要する弱点の発見も行われるようになる。
これらの作業にかかる費用は、IT部門が通常コンプライアンス対応や監査に費やしている水準を超えている。新たなIIoTプロジェクトをスタートさせる際には、このことも織り込んでおく必要があるだろう。