変わりゆくソフトライセンス(3)--「時流」に流されない調達方法とは

西浦詳二 (フレクセラ・ソフトウェア) 2019年03月27日 07時00分

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 これまで(第1回第2回)、ソフトウェア購入時における永続ライセンスとサブスクリプションの違いについて、シンプルなROIモデルを使って比較し、見落としがちな点を考察した。自社でソフトウェア(のライセンス)自体を調達する、という前提があった。しかし、所々で触れたように「サービス化」の流れは急激に進みつつある。最終回の今回は自社で調達する以外の選択肢を併せて、ソフトウェアライセンスを考えてみたい。

1.XaaS

 「〇〇 as a Service」という表現を、ITに限らずさまざまなところで見かける。国内製造業の代表格である自動車産業でも「MaaS(Mobility as a Service)」という言葉をよく見かけるようになった。半年に1回程度の頻度で定期的に乗り換えができ、保険や登録諸費用、税納付などが含まれたサービス形態として話題になっていた。

 IT関連では「IaaS(Infrastructure as a Service)」「PaaS(Platform as a Service)」「SaaS(Software as a Service)」が代表的だが、その他にも多種多様なサービスが存在する。「〇〇 as a Service」という表現は、それまで「サービス」と捉えられていなかったものをサービス化するときに使われる。

 もう10年以上前になるが「〇〇 as a Service」で筆者が新鮮だと感じたものに、空調機メーカーのコンセプトがある。当時はまだ、「〇〇 as a Service」というコンセプトは今ほど一般的ではなかったが、ある空調機メーカーが「われわれは空調機を売りません」というのだ。「われわれが提供するのは空調機ではなく、新鮮な空気です」というわけだ。

 実際には空調機を使って新鮮な空気を供給するので、その会社にとって全く違う事業を行うのではない。しかし、これまでの空調機に加え、保守サービスや供給される電源、空気を送る送風ダクト、設置にまつわるビルオーナーとの調整など、それまで利用者や他の事業者が行っていた「新鮮な空気」のために必要なものをまとめて提供する。

 そして、空調機以外も含めて何らかの問題があって新鮮な空気を供給できなかった場合は、納品物(この場合は「新鮮な空気」)がないので顧客に代金を請求できず死活問題となる。そのため、安定したサービスを提供するためのモチベーションは高くなる。

 このモデルのポイントは2つあって、1つ目はパッケージ化の枠組みの変更(この場合はワンストップサービスで顧客の最終的な目的に近づける)、2つ目は利用者の利益と提供者の利益が矛盾なく組み合わさっているところにある。

 空調機だけを提供する場合には、利用者が目的(新鮮な空気を入手すること)を達成するためには自分でさまざまな提供者(電力事業者、設置業者、ビルオーナーなど)の提供物を自分でパッケージングし、自分で運営する必要がある。どの提供者にも責任がない、あるいはどの提供者に責任があるか不明な場合のリスクは全て自分で解決することになる一方、「新鮮な空気」をサービスとする場合は責任分界点が変わり、サービス事業者が面倒を見てくれる。

 ソフトウェアに話を戻すと、XaaSの場合、そのサービスに必要なソフトウェアライセンスは事業者が提供する。ハードウェア、電力、ネットワークなども同様だ。空調機の例に当てはめると、例えば目的が「社員に経費精算する環境を提供する」であれば、(1)旅費精算のためのアプリケーションソフトウェアのライセンスを購入し、サーバハードウェア、設置環境、OS、データベースソフトウェアを別途調達する。そして、運用状況の監視やセキュリティの確保、データのバックアップといった運用を続ける。あるいは、(2)旅費精算サービス提供事業者と契約するという選択肢もあるだろう(ここでは考察のために相当単純化した例になっている)。

 前回、IaaSとソフトウェアライセンス持ち込み(BYOL:Bring Your Own Software License)の組み合わせについて触れたが、これはパッケージングのバリエーションの一つだ。このパッケージングとソフトウェアライセンスを含むサービスを採用した場合のそれぞれで、自分が負っているリスクと潜在的コストが何なのか、それに伴うオーバーヘッド、つまりシステム構築や運用のコスト、契約、ベンダー、資産の管理コストは何なのかが変わってくる。それを考慮に入れることなく形式的なROIだけに基づいた決定が何となくふに落ちないという印象を与えるのは、ある意味では当然のことと思われる。

 第1回でテーマにした「サブスクと永続モデルのどちらを選ぶべきか」を考える際には、どのITコンポーネント(ハードウェア、ソフトウェア、設置環境、構築、運用、サポート、教育など)のパッケージング(どの塊で外部から調達するか)かを整理しておくと、3年間のROIでどちらが有利か、という視点に追加の見方が得られると思う。

 IT部門は、調達の枠組みを決定し(パッケージングとベンダー戦略)、調達したコンポーネントを組み合わせて目的を達成する(例えば「社員に経費精算する環境を提供する」など)。その際、エンタープライズアーキテクチャ、ITプログラムマネジメント、IT財務管理などのIT企画・管理機能が場当たり的な対応をせざるを得ない状況を防ぐのに役立つだろう。

 なお、企業によっては電力のような、通常は外部から調達するサービスさえも自社で賄う選択もあれば、ITに関連した業務は企画・戦略と中核部分だけとどめ、ほとんどをサービスとして調達することを選択する企業もある。「どちらを選ぶべきか」に対する答えは、結局は「個々の企業による」という当たり前の結論になるのだが、「時流だから」ではなく、考えに入れるべき枠組みとポイントだけは押さえておくべきだ。

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