「攻めの人事へ」--ワークデイが説く企業の人材活用術

松岡功 2019年04月03日 06時00分

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 人事管理を中心としたHCM(Human Capital Management)のSaaS型クラウドサービスで急成長を遂げている米Workdayが、日本での事業強化に乗り出した。そのキーワードは「攻めの人事へ」。どういうことか。日本法人ワークデイの社長執行役員を務める鍛治屋清二氏に聞いた。

会見に臨むワークデイの鍛治屋清二 社長執行役員
会見に臨むワークデイの鍛治屋清二 社長執行役員

Workdayのサービスが高く評価されている理由

 「欧米の企業はWorkday HCMを利用して人材をフルに活用し、いわば“攻めの人事”に注力している。日本の企業もこれに早く着手しないと、これからのグローバル競争には勝ち残れない」――。こう語る鍛治屋氏には、ベンダーとして自社のサービスを普及拡大させることもさることながら、このままでは日本企業がグローバル競争に生き残れないという強い危機感があるようだ。今回のインタビューで、筆者はまずそのことを強く感じたので、最初にお伝えしておきたい。

 Workdayは、鍛治屋氏が挙げたHCMと財務管理(Financial Management)のクラウドアプリケーション分野において、米Gartnerのマジッククアドラント2018年版でいずれもリーダーと位置付けられている注目のSaaSベンダーである。現在の年間売上高はおよそ28億ドル(3000億円)。同社のサービスを利用している顧客数は世界で2400社、日本で500社。日本では2013年に現地法人を設立し、2015年から事業を本格展開した。

 Workdayのサービスは、なぜ高く評価されているのか。導入期間の短さや初期コストがかからないといったクラウドのメリットもさることながら、鍛治屋氏は「単一のソースデータ、セキュリティモデル、ユーザーエクペリエンス」をはじめ、「ビジネスプロセスに沿った柔軟な(カスタマイズのない)コンフィグレーション」「高信頼のデリバリーモデル」「98%を誇る高い満足度」などを挙げた。

 特に、単一のソースデータ、セキュリティモデル、ユーザーエクペリエンスについては、「Power of One」というコンセプトを前面に打ち出している。図1に示したのが、このコンセプトをベースとしたWorkdayのサービス群である。

Workdayのサービス群(出典:ワークデイの資料)
Workdayのサービス群(出典:ワークデイの資料)

ユーザーから見たWorkday HCMの魅力とは

 こうしたWorkdayのサービスにおいて、日本では市場の機会を探りながら、まずはHCMを前面に押し出して事業を展開してきた。このHCMについては、鍛治屋氏が冒頭の発言で「攻めの人事」というキーワードを挙げていたが、これについてもう少し詳しい説明を、同氏の話をもとに記しておこう。

 人事管理の機能を中心に、タレントマネジメント、勤怠管理、求人・採用など、人事部門の業務を包括的に支援する機能を備えたWorkday HCMは、多彩な機能をシンプルかつ直感的に扱えるようコンシューマー向けアプリのようなユーザーインターフェースを備えているため、スマートフォンやタブレットからも簡単に操作できる。

 そんなWorkday HCMの大きなメリットとして挙げられるのが、「従業員の採用から退職に至るまでの全ての人事データを、グローバルかつリアルタイムに統合・管理できること」である。高度な分析とレポーティングの機能を備えたWorkday HCMであれば、それらのデータをもとにした多様なレポートを容易に作成することが可能だ。

 さらに、グローバルの各部門や組織のビジネスパフォーマンスと人材配置との相関を割り出すことも容易になるため、経営・事業戦略に基づく組織設計・人材計画の策定もスピーディに行える。いわばWorkday HCMは、非生産的な雑務から人事部門を解放し、「攻めの人事」へと導くためのソリューションなのである(図2)。

Workday HCMの機能群(出典:ワークデイの資料)
Workday HCMの機能群(出典:ワークデイの資料)

 そんなWorkday HCMだが、鍛治屋氏は日本での事業展開について、アイ・ティ・アール(ITR)の調査結果によるHCM市場の推移を描いた図3を示しながら、「日本のクラウドHCM市場は驚くほど小さい」と語り、「これを3年後には誰もが認知する規模に拡大したい」との意欲を示した。この図によると、例えば、2021年度の予測でもHCM市場全体の規模は100億円程度。そのうち、パッケージが7割、SaaSが3割といった具合だ。同氏が「驚くほど小さい」と指摘したのは、この規模のことである。

国内HCM市場の推移(2月14日ワークデイ会見にて筆者撮影)
国内HCM市場の推移(2月14日ワークデイ会見にて筆者撮影)

日本での成長戦略、2021年度から財務管理も提供開始

 では、ワークデイは日本市場での成長戦略をどのように描いているのか。図4に示したのが、今後3カ年の計画の内容である。同社にとってこの2月に始まった2020年度は「日本の市場に合ったオペレーション体制の確立」、2021年度は「市場とシェアの拡大」、2022年度は「プラットフォームプレイヤーとして確固たる地位の確立」をテーマに、「国内大企業とグローバル企業」をメインターゲットとして、「3年間で国内クラウドHCMの分野のマーケットリーダーを目指す」ことを掲げている。

日本市場の成長戦略(2月14日ワークデイ会見にて筆者撮影)
日本市場の成長戦略(2月14日ワークデイ会見にて筆者撮影)

 年度ごとの具体的なアクションは、それぞれ図の下部に表記されている通りである。とりわけ、予定通り2021年度から財務管理サービスがスタートすれば、日本でも同社のサービスの“両輪”が利用できるようになる。鍛治屋氏はさらに顧客数として、日本発のグローバル企業でのサービス採用を、「現在の30社から3年後には100社に拡大したい」との目標を掲げた。

 最後に、ワークデイの今後の成長戦略に向けて最大の強化策といえるのは、鍛治屋氏の社長就任だ。2018年10月に日本法人設立以来初めて日本人社長として就任した同氏は、これまでダッソー・システムズなどソフトウェアベンダーの経営トップを歴任するなど、IT業界で30年以上のビジネスとマネジメントの経験を持つ。筆者は同氏がダッソー・システムズ社長のときに取材したことがあるが、今回は対象の市場もガラリと変わり、心機一転、やる気にみなぎっている様子がうかがえた。

 同氏が言うように、日本のクラウドHCM市場はまだ小さいが、今後の成長分野としてSAPやOracleといった巨大ソフトベンダーも虎視眈々(こしたんたん)と事業拡大を狙っている。そうした中で、CRM分野で成功したセールスフォース・ドットコムに続き、SaaSベンダーとして躍進することができるか。鍛治屋氏の経営手腕が注目される。

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