Oracleはラスベガスで開催された同社主催のマーケター向けイベント「Modern Customer Experience 2019」で、顧客体験に関する同社のビジョンを示した。
顧客体験とは、顧客と特定ブランドとのすべてのタッチポイント(接点)を総合したものを意味する。優れた体験を生み出すことは「言うは易く行うは難し」だ。ここでは、この課題について掘り下げていくことにしたい。
優れた顧客体験を生み出すのが難しい理由
一般的な顧客が商品やサービスについて調べ物をし、購入し、実際に使うまでの流れを考えてみてほしい。このプロセスは「カスタマージャーニー」と呼ばれている。以下で説明するのは、一般消費者の買い物にも、企業間取引にも当てはまる、単純化された3段階のカスタマージャーニーだ。
- 知る:潜在的な買い手は、製品について調べ物をしたり、友人から話を聞いたり、物理店舗に行ったりして情報を集める。買い手は、この最初の段階で自分が求めている条件を明確にし、買うべき製品やサービスを見つけようとする。
- 買う:互いに競合する複数の選択肢や商品について調べ終えると、買い手は決断を下す。購入の際に行われる行為は、ウェブサイトで「注文を確定」ボタンを押すだけの簡単な操作かもしれないし、大企業の代表として契約書を交わし、発注書を送るというような複雑なプロセスかもしれない。いずれにせよ、買い手は最終的に商品やサービスの代金を支払うという商行為を行うことになる。
- 使う:購入後、買い手はその商品やサービスを使用し、場合によってはカスタマーサービスやサポートを利用する。理想は、満足した顧客が、友人や同僚に自分の体験の素晴らしさを伝えてくれることだ。
このプロセスは、スーパーで歯磨きを買うときにも、Amazonのウェブサイトでサングラスを買うときにも、新たなコンピュータシステムを導入する数百万ドル規模の業務委託契約を結ぶときにも発生している。
顧客体験の最終的な目標は、商品や企業に対して肯定的な感情を持つ顧客を生み出し、商品や企業へのロイヤリティを高め、リピーターになってもらうことだ。
現代のデジタル化された世界では、売り手が買い手について理解し、カスタマージャーニーの各段階で買い手が何を気に掛けているかを知るために、データを利用することができる。従って、企業が顧客の行動を理解し、顧客体験を改善するためにはデータが重要になる。
データは、企業が消費者を親身に理解するための間接的な手段を提供してくれる。正しいデータがあれば、企業は買い手が何を気に掛け、何を求めているかを推測することができる。つまり、データが買い手の意図に対する理解を深めるための鍵になるわけだ。やり方が適切であれば、データに基づいたパーソナライゼーションは自然に感じられ、気持ち悪さを感じさせない。
この説明はかなり単純化されたものだが、なぜ優れた顧客体験の提供が複雑で難しい問題かを理解する手がかりにはなるだろう。