デジタル化の進展ペースが速まり、その規模も大きくなったのに伴い、リスク対応や内部監査の専門家にも高度なことが求められるようになっている。コンサルティング企業PwCが発表した最新のレポートによれば、賢明なリスクマネージャーは、データやデジタル活用能力を上手に使って、自らの意思決定の内容を伝えている。
同社の調査レポート「Risk in Review」には、リスクマネジメントがうまく行っていれば、リーダーは脅威をよく把握し、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができると書かれている。このレポートは、世界中の2073人の最高経営責任者(CEO)や、取締役、リスクマネジメントや内部監査、コンプライアンスを担当するプロフェッショナルなどを対象として、2018年10月と11月に実施された調査に基づくものだ。レポートでは、企業の持続可能な成長を支えるために、先進的なリスク対応関連部門が行っている6つの取り組みについて解説している。
企業のデジタル化戦略を全面的に支える
レポートによれば、デジタル変革は部門間の連携なしには成功しない。これは、さもなければ適切なガバナンスを受けていない繋がりが多くできてしまうためだ。成長目標や評価手法を設定した、用意周到で連携の取れたデジタル化戦略は、企業のリスク対応文化を支える重要な要素となる。
企業が全面的なデジタル変革を進めて行くには、企業全体が新たなテクノロジの導入に取り組む一方で、リスク対応関連部門はその戦略を支えるガバナンスの体制を整える必要がある。PwCが最近実施した別の調査では、世界のどの地域のCEOも、人工知能(AI)革命はインターネット革命よりも大きな影響を及ぼすと予想している。
しかし、AIには質の悪いデータやバイアスがかかったデータなどのリスクがあることも明らかになっており、多くの企業幹部は、AIが責任ある形で使われるよう、監視や妥当性の確認、検証などを行い、AIに関するセキュリティを強化しようとしている。
組織のスピードについて行けるよう、スキルの向上と新たな人材の採用を進める
組織はデジタル化を推進するためのスキルを常に強化していく必要があり、その点についてはリスク管理部門やコンプライアンス部門、内部監査部門なども例外ではない。レポートによれば、これらの部門は、リスクを特定し解消するためのデジタルツールを導入することで、機能を高めることができるという。
一部の組織は、工学を専門とする教育機関と協力して、まったく新たな形でコーディングやデータアナリティクスのスキルを持った人材を採用している。例えばPwCは、カーネギーメロン大学と協力して適切なカリキュラムを開発している。戦略を問わず、どんな組織であっても、リスク対応関連部門は組織のペースについていくために新たなスキルを身につけていく必要がある。
新たなテクノロジを適切に活用する方法を見つけ、システムに信頼できる情報を供給する
PwCは、データ自体の質が低かったり、さまざまなストレージに保管されて分断されてしまっている場合、新たなテクノロジがもたらすリスクに対応するのは難しくなると述べている。デジタル化に成功している企業の特徴は、データを賢明に活用して、顧客や自らの組織のために価値を生み出していることだ。
そうした企業は、新たなテクノロジの可能性を最大限に活かすために、資産としてのデータのクリーンアップ、統合、管理の統合を重視している。