海外コメンタリー

企業におけるAI導入、真のコストとROIを把握するには - (page 2)

Mary Shacklett (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-04-18 06:30

ビジネスケースの作成

 前述のTech Pro Researchの調査によると、回答企業の53%が自社の業務に対するAIやMLのメリットについて明確に理解していないと答えている。

 これは危険な状況だが、AI/MLと特定の業界における経験の豊富なベンダーや業界コンサルタントによる支援が期待できる。

 コンサルタントは企業のIT部門や業務マネージャーとともに作業し、AIやMLの導入で成果が得られる健全な業務ユースケースを洗い出すための支援を提供できるはずだ。

 また、AIやMLを手がけるベンダーは、特定の業界向けにあらかじめパッケージ化したユースケースで支援できるはずだ。その一例として、ヘルスケア業界向けの「IBM Watson」が挙げられる。これは病院や診療所が医療診断に利用できる、今や「実績ある」、あらかじめパッケージ化されたソリューションとなっている。

 ただ、あらかじめパッケージ化された実績あるソリューションであっても、予備的パイロットプロジェクトによって、(1)そのソリューションが企業の期待する成果をもたらし、(2)投資額と取り組みの労力に見合う成果をもたらす、という2点を確認することが、現時点でのベストプラクティスとなっている。

 AI/MLのパイロットプロジェクトは、コスト増加の妥当性を示せるテクノロジーのPoC(概念実証)として重要だ。また、IT部門と業務部門の双方が自信と経験を培うための手段としても同じくらいに重要だ。

投資の妥当性の証明

 業務ユースケースの洗い出しと試行が終われば、AI/MLのより広範な実装のROIを算出し、そのための費用を確保するというタスクに着手することになる。

 IT部門がITプロジェクトのROIを算出する一般的な手法は、システムの改善によって業務プロセスから削減できる時間とコストを見積もるというものだ。例を挙げると、データセンターの物理サーバーを仮想サーバーで置き換えるという、ほとんどの企業が10年前に実施したような投資の場合、新たな仮想化ソフトと機器の初期導入費用を計算し、それを不要になるフロアスペースや電力、物理サーバーにかかる費用の合計と比較するという、比較的単純なものとなる。

 しかしAIやMLの場合、ROIの算出はそれほど簡単ではない。

 たいていの場合、AIやMLによって運用や意思決定のプロセスの一部が自動化できるため、マンパワーの削減が期待できる。しかし、業務ワークフローの初めから終わりまですべてを自動化、あるいは合理化できることはほとんどない。

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