ここでのまとめ
パイロットプロジェクトにおいて当初、運用時間の短縮や、潜在的な収益の改善によって魅力的なROIを達成しても、プロジェクトを継続するうえで十分に説得力のあるROIだとは言えない。AI/MLプロジェクトの推進者は財務部門とともに、数年間にわたる長期的なROI予測を押さえておくべきだ。このような長期的な予測は、新しい設備/ソフトウェアやクラウド、電力、データセンター、訓練、システムおよび業務プロセスの改訂および統合などにかかるコストのほか、新たなテクノロジーを活用するために必要となる可能性がある追加のマンパワーなど、AI/MLを運用するうえで必要となるすべての企業資産を考慮しておくべきだ。ここでの目標は、長期的な収益の向上をもたらすとともに、業務プロセスとその成果を豊かなものにし続けるという価値に基づくROIを導き出すことになるはずだ。
ROIの落とし穴を避ける
AI/MLの長期的な運用を可能にするうえでの信頼性の高いROI算出式を生み出すもう1つの鍵は、ROIを脅かす潜在的なコストの落とし穴を認識することだ。以下にその典型的なものを挙げる。
システム統合
AI/MLシステムはそれ単体で運用されるわけではない。ベンダーはそのことを理解しており、多くは自社システムがユーザーのシステムすべてと相互運用できる完全なAPIを提供していると主張するだろう。この主張は、AIが高度にカスタマイズされている、あるいは社内で運用しているレガシーシステムと連携する必要が出てくる時まで崩れることはない。しかし、連携させようとするとたいていの場合、IT部門はシステムインターフェースを手作業で開発しなければならなくなる。
この作業は時間とコストのかかるものとなり、いずれもがROIを悪化させる要因となる。
AIが力を発揮するまでのコスト
AIは人間の脳をエミュレートするコンピュータに依存しているため、そしてMLは人間の学習と同じ方法でパターン認識を繰り返して学習を続けるというAIの部分集合であるため、人間と同様に誤った解釈をしてしまう可能性がある。