3月に投資会社EQTの下で独立企業となったSUSE。Red HatがIBMの傘下に入る中、SUSEの成長戦略は何か。4月2日からSUSEが米国テネシー州ナッシュビルで開催している年次カンファレンス「SUSECON 2019」で、最高経営責任者(CEO)のNils Brauckmann氏に聞いた。
--MicroFocusからEQT傘下に入り、独立企業として再スタートを切った。新しいSUSEのビジョンは?
これまでと同じこと、そして、変化したことがある。継続することは、オープンソースビジネスへのコミット、企業にとって信頼されるアドバイザー、コンサルティングパートナーであることだ。われわれは今後もアジャイルなエンタープライズ向けオープンソース技術を提供する。
SUSE CEOのNils Brauckmann氏。Novell、MicroFocus、そしてEQTと親会社が変わったことについて、「変化はいいこと。その度に成長してきた」と語る。Red Hatについては「日々の業務でRed Hatとの競争を意識していない。自社の強さをどうやって活用するかにフォーカスしている」とのこと
新しいこととしては、ビジネスの全ての側面をわれわれ自身がコントロールできるようになった。自社のITも管理できる。これまでは親会社のプロセスを踏む必要があったが、国際展開する中規模企業のITを構築できる。このように、SUSEのメリットになるようにITもビジネスも制御できる。
製品側では、これまでエンタープライズのLinux、ソフトウェア定義のインフラ技術に加えて、アプリケーションデリバリー、コンテナとコンテナ管理、オーケストレーションを強化する。マルチクラウド、ハイブリッドクラウド環境でコンテナを管理できるようになる。これまで以上に、顧客企業にとってより良いオープンソースのパートナーになる。実際、(IBMによるRed Hat買収が完了すると)SUSEは世界最大の独立系オープンソースベンダーになる。
--その成長戦略を具体的にどう実行していくのか?
SUSEは数年前から成長路線に入っている。年15%程度の成長を維持しており、売上高は4億ドルに達するところだ。独立企業になったことで、今後は市場のポジションを確立するために迅速に動く。これまで成長の多くは社内開発により進めてきた。これに加えて買収戦略を強化し、成長スピードを加速する。
新しい親会社のEQTは、成長中の企業を所有してさらに高速に成長させるという方針をとっており、そのための資金、専門知識などの支援を得られる。買収戦略を進めるために、戦略とアライアンス担当トップが戦略的観点から技術面で買収対象を見て、エンジニア側のトップが技術リサーチとして、買収対象のオープンソースコミュニティー、コードベースなどを見てSUSEにフィットするのかなど、品質を見る。さらに、新しい最高執行責任者(COO)の下にプロジェクトマネジメント組織を置き、ここで買収した企業のビジネスと技術をスピーディーに統合するという体制を整えている。
成長と拡大は、ソリューションを提供するということだけではなく、市場展開ではチャネルパートナーとの協業をさらに効率化する。クラウドサービス事業者、グローバルシステムインテグレーターなど新しいタイプのチャネルパートナーも積極的に増やし、協業を拡大する。クラウドでは、Microsoft Azure、Amazon Web Services(AWS)などに加え、Alibabaとも提携を発表した。また、地域別の強化も図り、その地域に合わせた成長戦略をとる。このように、ソリューション、市場展開、地域の3つが成長の柱だ。
--買収先はどのような分野を見ているのか?
ハイブリッドクラウドやマルチクラウドにおけるワークロードの実装と管理、コンテナ管理、オーケストレーションにフォーカスしており、ここを強化するような技術を持つ企業になる。
--Kubernetesは、どのベンダーも取り組みを進めている。SUSEの差別化は?
われわれは「SUSE Container as a Service(CaaS)」プラットフォームを持つ。Kubernetesだけでは、企業はコンテナを管理できない。セキュリティ、ネットワークなどの技術を加え、さまざまな環境でクラスタの構築、オーケストレーションができる。
Kubernetesは新しい技術で、どのようにサービスを提供するかも差別化になる。エンタープライズの文脈で利用できるサービスを提供する。これはLinuxでわれわれがやったことと同じだ。
--日本市場をどのように強化していくのか?
地域に合わせた戦略をとる。日本は特に品質、信頼性への要求が高い上、ミッションクリティカル環境でSUSEを採用しているところが多い。SUSEは約束をきちんと実現して、信頼できるパートナーになる。富士通、日立などのハードウェアベンダーとの関係も良好で、今後も強化していく。
(取材協力:SUSE)