働かせ改革ではダメ--効果を実感できない「働き方改革」は再考すべし - (page 2)

TechRepublic Japan Staff

2019-04-08 07:00

 働き方改革は大きく3つのステップがあるという。ステップ1は、コンプライアンスの徹底だ。法令で定められた最低ラインを遵守するために、社内ルールを設定し、運用を徹底したり、労働時間を見える化するための取り組みに着手したりする。具体的には、残業時間の設定やPC強制終了、午後8時の退社強制、労働時間の上限を強制的に決めるなどだ。

 ステップ2は、既存業務の効率化だ。業務量を削減して本質的な働き方改革を実現するために、既存業務を効率化できる、さまざまな取り組みに着手する。具体的には、クラウドアプリケーションやモバイルデバイスなどを活用したスマートワークの実施、業務プロセス改革(BPR)による業務の削減や標準化、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)による定型業務の自動化、チャットボットによる問い合わせの自動化、人材マネジメント変革(RPM)による評価や育成の工数削減などだ。

 さらにステップ3では、イノベーションの誘発を目指す。これは、既存業務の効率化によって生まれた工数を最大限活用し、事業のさらなる発展を目指すための取り組みだ。具体的には、異能人材の登用やコラボレーションの仕組みの導入、プロジェクト型の働き方の導入、チェックイン(1on1)による育成施策、10%ルールの導入、兼業・複業の解禁などだ。

 この3つのステップのうち、最初のステップのコンプライアンス徹底で止まってしまうために成果まで至らないのだ。

デジタルで「業務量削減」「成果向上」「働きがい向上」

 その上で田中氏は、働き方改革の本質として「リソースをシフトし、よりクリエイティブなことに使える時間をつくっていくこと」を挙げた。残業時間だけを削減しても意味はなく、何のためにやっているかを考えていく必要がある。

 ただ現実には「働かせ改革」の構造がある。生産性を向上させるには、成果(売り上げや利益、顧客満足度など)をリソース(労働時間、要員数、工数など)で割った値を大きくすることが求められる。

 取り組みとしては、分母(リソース)を小さくすること、分子(成果)を大きくすること、+αで働きがいを加えることが考えられるが、現実にはリソースを削って、働きがいをマイナスにしている状況だ。

 「短時間で同程度の成果を出す必要に迫られ、従業員はクタクタになっています。旧来型のテクノロジーや仕事の進め方から逃れられず、従業員の働きがいを低下させる要因(不満)が溢れかえっている状態です。そこで重要になるのは、デジタルテクノロジーを活用して、社員の仕事のしかた、すなわち意識を変えることです。これにより生産性と働きがいの向上を目指します」

 例えば、満員電車で出社し、目的が定まらない朝礼で意欲が削がれ、メール処理で時間を使い、相談したいことがあっても相手がつかまらず、作業ができないような移動時間が長いといった状況があったとする。これを、テレワークで出社時間から自由になり、オンライン会議でミーティングに参加し、チャットツールで情報を仕分け、タブレットで移動中のスキマ時間を活用して作業するといった働き方に変えていく。

 大胆な自動化で分母となるリソースを小さくし、精神への負荷を減らしイキイキと働くことでプラスアルファの働きがいを高め、テクノロジーの力を借りて分子となる成果も大きくしていく。

 「デジタルテクノロジーを活用して、業務量削減や成果向上、その実現に寄与する働きがいを高めることがカギです」

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