編集部からのお知らせ
EDRの記事まとめダウンロードはこちら
電子契約の記事まとめDLはこちら

デジタル時代に必要な「データリテラシー」--データ責任者が解決すべきもう1つの課題

濱野正樹 (クリックテック・ジャパン)

2019-04-10 07:00

 現代のリーダーたちは、不確実な状況において重要な決断を下さなければなりません。意思決定に役立つデータが十分にそろわない状態でアクションを起こすのは無謀ですが、必要なデータが集まるまで待っていては手遅れとなってしまいます。多くの組織にとっての課題は、この時間と確実性のバランスを取ることです。

 どのような事業においても不確実性は存在します。ポリシーやプロセスを制定し、システムでコントロールしたとしても、完全には消し去ることができません。そうした不確実性をもたらすのは、市場、競合他社、社会、技術、労働力、期待、価値などにおけるさまざまな予期せぬ変化です。企業は日々、こうした変化に直面しており、迅速に対応しなければなりません。

迅速で正しいビジネス判断には
データだけでなく組織全体のリテラシーが重要

 データを分析することで、これらの変化や不確実性に対処します。ビジネスの置かれた状況を調べ、根本原因を分析した上で代替案などを評価し、対応策を実行に移します。分析に使うデータを素早く集められれば、すぐに決断して対処することができます。前述の考えに従うと、常にスピードと確実性のバランスを取っていることになります。正しい判断というだけではなく、迅速かつ正しい判断が求められるわけです。

 世の中の変化に迅速に対応するには、分析のスピードも高めなければなりません。分析結果をより短時間で用意するには、セルフサービス型のビジネスインテリジェンス(BI)ツールなどが有用です。それともう一つ、データから得られた洞察を理解し、さらにそれを説明できる能力、つまり「データリテラシー」が重要な要素となります。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)は、データリテラシーを「データを読み、処理し、分析し、議論する」能力と定義しています。データサイエンティストやシステムアナリストであれば、最低限持っておかなければならないスキルです。しかし、組織全体で分析スピードを向上させるには、現場からバックオフィスまで、全社的にデータリテラシーを高める必要があります。これは、「データ分析の民主化」とも言われますが、実践している企業はほとんどないのが実情です。しかし、大きなビジネスインパクトがあると分かっています。

データリテラシーが高い大企業の企業価値が上昇
日本企業のリテラシーは低迷

 米ペンシルベニア大学ウォートン校と米調査会社のIHS Markitは、データリテラシーの必要性に焦点を当てたコンソーシアム「Data Literacy Project」の依頼を受け、600社を超える企業のデータリテラシーを評価しました。この調査によると、データリテラシーが高い大企業は、同業他社よりも企業価値が3〜5%高いといいます。

 この調査では主要10カ国のデータリテラシーを比較しており、日本企業は100点満点で最下位となる54.9点でした(首位はシンガポールの84.1点)。国際的な競争力を高めるためにも、日本企業におけるデータリテラシーの向上は急務といえます。

IHS Markitの調査結果
IHS Markitの調査結果

 こんな一例もあります。数年前、米国のある消費財メーカーは、製品開発のために顧客からのフィードバックを集め、分析するチームを立ち上げました。同社が扱う飲料製品のうちの1つについて、ある地域で不満が急増した1週間がありました。同チームはデータ分析技術を駆使し、製造工場を特定しました。工場長に話を聞くと、その月に主要原料の供給元を変更したことが分かりました。元の供給業者に戻すと、苦情は減少しました。

 このような事例は当たり前のように見えますが、実際はそうではありません。サプライチェーンで重要な要素が欠けていることはよくあります。さまざまな証拠を集めてつなぎ合わせるプロセス、予期しない運用上の問題を見つけて、その根本原因を特定できるデータ分析チーム、そしてこのようなチームが直接権限を持って行動できること、これらの要素がそろわなければ、製品の地域的な落ち込みは売上報告書の中で見過ごされ、経営陣が問題を認識して対応することすらできません。結果として不必要に放置された顧客が増加していきます。大きな組織ほどこの影響は大きくなり、数千の顧客を失うことにもなります。

データリテラシーを向上させる3つの要素

 従業員のデータリテラシーを高めるには、3つの要素を考慮する必要があります。

  1. スキル構築:組織内のあらゆるレベルでリテラシーを向上させるための無料オンラインカリキュラム。管理職層がこのカリキュラムを推奨することで、従業員は能力開発の機会と捉え、スキルアップにつながります
  2. データ資産:データは見つけやすくて分かりやすく、すぐに分析に利用できるようになっている必要があります。データ分析コミュニティーをサポートするために、オンプレミスまたはクラウドを用いて迅速かつ手頃な価格で提供されていることが必要です
  3. 分析ツール:拡張知能(AI:Augmented Intelligence)の導入。分析業務に機械学習を組み合わせ、人間による判断を支援することができます。最新のツールは、見やすく操作性も良くなっています。また、コーディングの知識も不要で、分析結果の共有機能なども備わっています

 データリテラシーは、従業員の生産性や労働意欲を高めるだけでなく、環境変化に対する組織の適応能力も高めます。今後、絶え間ない変化とそれに伴う不確実性に対処することがますます求められます。受け身の組織文化を脱し、攻めに転じることも可能です。データ分析のスピードを高めることで、ビジネス全体の俊敏性を向上させ、それを達成した企業は競合から一歩先を行くことができるでしょう。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]